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ブルーズを聴かせてあげようか
珈琲も淹れたし
なんだか汗もベッタリ
それにどう、この音、
あんたにもこの血が混じっているのじゃない
このサックス
*
その夜、
なにごともままならないので彼女は
とても癇癪をおこしたんだ
きっと人生が、
かなしくて、かなしくて
手を伸ばして
断腸の声をあげて泣いた
慟哭するうちに
それは癇癪ではないところに深まり、
根源的な慈悲という大陸へうつろってゆくんでしょう
誰もがもともと、初めはこうして
数え切れないほど泣いたのだし
いいからお泣きよ
*
わたしはちょうど先刻まで
ゴキゲンにメロウなのを聴いてたところだったから
気分は上々で
かなしみなんてクローゼットの中に
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フェリーで
トラックドライヴァ達のいびきに苛まれ、
凍えた明け方を過ごし、
青森から東北道に乗るための
さびしい、慣れた道。
から
いつのまにかはずれて、
さらにさらに、さびしい見慣れぬ道をしばらく走っていた。
風景がどんどん日本昔話みたいになってゆき、
これはすっかり間違えてることにようやく気付いてUターン、
さんざ遠くまで来たみたい。
ばかみたいに時間が経ってからあらためて東北道に乗り、
かとおもえば
乗った途端に猛烈な睡魔がやってきたので
早々にピット入り、とおもって本線をはずれると、
そこはパーキングエリアではなくてただの出口。
せっかく乗ったハイウェイからまた遠ざかり、
りんご畑の村の片隅で寝た。
おかしいな。
そういえば
フェリー乗り場の受付のおとこと
ちょっとしたひと悶着があって、三白眼で睨まれた、
きっとあいつがキツネだ
*
天のすべてが雨みたいで
どこまで行っても、土砂降りの雨が続いた。
これもキツネのせい。
だがT氏が購入したボルボは
豪雨などおかまいなしに、速かった。
イイ車!!
いつものわたしのジムニーでは
東北道すべての車に追い越され尽くして走るために
ついぞ体験したことのない右側追い越し車線、
今回はあまりに速すぎて、
仕方がなくずっとそこを走るハメになってしまったくらいだ。
カウントダウンされる東京までの距離数が
どんどん減ってゆくのを
やけに集中したブルーズの眼で追った。
東京が差し迫る
*
「 T氏、ただいま、ハイどうぞ、
あなたが購入した車はこれです 」
「 ヒュー、いいね、オレの車。
...ねえおまえさあ、
函館にいるたかだか3週間でいったい
なにをやってたの。
走行距離が、記載から1万7千キロ進んでるぜ?
たったの3週間で?
青森 - 東京だって700キロしかないのに?
おまえの函館って、どれほど広いの?
納車された途端にオイル交換するオレ。 」
「 ハッハッハ 」
そして当のわたしのジムニー( 社長カー )
( 別名 【 かわいそうなロバ 】 ) は
帰ってみると5月いっぱいで、
【 車検が切れていた 】
ので
さっそくの先夜からの夜勤は
軽トラをレンタルして出かけた、というわけ。
悪いのは、ジャズ。
ハイお粗末!!ベベンベン。( パクり )
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( そしてまだ ) 車がないので
雨の中央線に乗って吉祥寺へ現場調査に。
その夜
たまたまメグで大口氏の入ったセッションがあったので寄った。
わたしはピアノのみならず、彼の笑顔が大好きで
なおかつ彼を理解したかった。
うわあぁ!!さっちゃんじゃない、
やあやあやあやあよく来たねよく来たね、
イヤ函館楽しかったよ忘れられないね、
僕また行きたいなあ、大好きになっちゃったよあの街。
あの晩に集まってくれたひと全員と
ガシッと両手握ってさ、ありがとうありがとうって云いたいんだ。
たまんなかったねホントにさ、もう、あの雰囲気!!
是非ともまた行きたいねえ。
!!!!
「 是非ともまた行きたいねえ 」
この言葉をわたしは神棚に奉ります。
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ベーシストのヨネキはただいま、ずいぶん遠くの
下関に着いた。
- 海がすげぇイイぞ、橋がかかって船がたくさん行き来してる、
明日はこの街でプレイ。