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停車場から程近いところにあって
しっとりと奥行きのある灯りを放っていた、
小さくて小粋なバーがその頃あって
お客様の層はたいへん上品な大人の方たちだった。
*
ジャズ喫茶を切り上げる時間になったり、
埠頭の散策、倉庫の裏などの徘徊を終えた深夜に、
ときどきそこへ向かった。
*
十代も終わりのわたしはそこを生意気にも気に入っており、
ときどき通っては、
やけにフツウな人物を装っているそのマスターと話した。
なぜこのひとはこんなに
フツウにしているのだろうかと訝った。
この街の、クセのある人物が多いことに慣れていたし、
お店を持っているとなるとひときわフツウでなかった。
だからこのひとは異彩を放って見えていたことになるも、
かつ、たいへん不思議な快適さがあった。
『 控えめ 』 という指紋のついた表現とも違った。
後年、よい店の店主とはかくあれかし、
ということを東京で
身をもって体験しつづけるようになった。
*
ガリアーノをショットで飲むと、
この店のアンティークな灯りと溶け込みそうな心地だったし、
マスターのオリジナルカクテル、
「 my back pages 」 は
いわずもがなのキースの名曲タイトル、
このグラスがほんとうに
心に沁み入るせつなさを伴って、
夢のように、とてもおいしかった。
この曲が好きだったのかこのカクテルが好きだったのか、
もうどっちだかわからなくなった。
*
お酒を飲みながら、
いつも作戦ノートをつけているわたしの手元を覗き込み、
好き勝手な空想や計画や図面に、
おもしろそうだ、と彼はノートをパラパラ。
*
しばらくたのしく通っているうちに、
結婚するという報告を受けた。
エエエッまだ何も申請されてないですけど?
とびっくりしていると、
相手はわたしではなくてK.という名の別のひとだった。
チッなんだ、とおもったかどうかは忘れたが、
まあ結婚したひとなんてだいたいつまらなくなるもんだ、
あああつまらない、きっとつまらない、
などとワケ知り気に、
若いわたしはおもったような気はするが、
とにかくそういう方向性の予想を退けて、
このカップルの夫婦形態は非常におもしろく、
わたしはこの夫妻がとても、好きでいる。
このひとたちといっしょに
ジャズを楽しむ時間が大好き。
*
そうしているうちに、
その老舗の質屋さんの1空間を利用したその小粋なバー、
近所に移転するという報告を受け、
エエエッまだ申請されてないですけど?
イヤーやめてぇ!
あああこれもつまらない、
この老舗の空間だからこそよかったのに、
ああもうほんとうにつまらない、
なんてばかなんだこのひとは、
つまらないつまらない、残念だ、
と未練がましくひとり騒いでいるうちに
さっさと移転は無事に済み、
その店は期待と予想に反して、
すこぶる素敵な、しかもなにかを身に付けた、
またはなにかを解き放った、
この若いマスターの気概のさりげなく詰まった、
彼の普遍的なホスピタリティの権化となって、出現した。
わたしはものすごく感慨深く、
なぜか親のような気持ちになって安心した。
( 余計なお世話 )
それから6年が経った。
*
いま、
その店の、ホームページを新たに、
不肖我々サクセンカイギ社で
リニュアルデザインさせていただきましてね。
もう嬉しくて嬉しくて。
・・・・・ という要点の日記です。
長い?また要点を最後に持ってきてしまった。
*
先夜、
店内撮影がてら店へゆき、
携帯電話の写真機でパチパチやり出すと、
「 ホームページ作ってくれるひとが
撮影に来てくれたとして
それが携帯てどうなのよ? 」
などと突ッ込まれては、
” この携帯電話は!
写真機としての機能がスゴいワケ! ”
と大威張りで返してスタジオに戻り、
【 8.1メガピクセル 】 と書いてある、
じまんの携帯電話写真機の
いま撮ってきたばかりのデータを
移動させて見てみると、
威張ったワリにはまったくいつものように、
モヤっとした作品ばっかしであったのを、
かまわずにホームページに使用してしまっている。
ワッハッハ!!
フン。この店の良さは、
そんなケチな理由なんぞでは揺るぎません。
が、キャメラを買ったら直します。
どうぞよろしく。
更新もどんどん行きましょう!!
もうほんとに嬉しくて嬉しくて。
>>函館元町・Bar shares Hishii さんのホームページと、
>>わたしたち サクセンカイギ社のポートフォリオのページ。
※ オマケ
bar Shares Hishii さんのHPの
【 music 】コンテンツの2ページ目の画像は、
なんと我らがベーシスト、ヨネキです!
Y君が苦戦して挿入してくれました。ウッハ~
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