■
北海道B...財団某という男がふたり
弁天町に日が暮れるとき
古い木造のナナメな階段を3階まで上り、
我々の、薄ら寒い事務所に来てコートを脱いだ
*
ひとりはポーカーフェイスに寝グセが目立ち、
もうひとりは笑顔を湛えて上品さが目立った
・ 寝グセ氏はジャズやオーディオの話に
ポーカーフェイスのまま反応した
・ 上品氏のほうは
同席のIW氏がお茶をふるまったとき、
そのジノリや1800年代の家具に反応した
はるばる札幌からやってきた彼等の探し物は、
文化あるいはその芽 だという
*
我がIW氏が電話を取り次いで、
ナントカ財団様がこの街の文化を探しに、
というお話があるそうですがいかがいたしましょう、
と数日前にわたしに問うたとき、
んなもんあるか、とか 知るか、とか云った
*
ところで
使われていない建築物に出会うと
相変わらず
どうしても放っておけなくなる
*
誰かに発掘されやすい趣きを擁した、
古い蔵や煉瓦や木造はやがて誰かがきちんと、
お店にしたりするし、
昨今は国内でもそのような動きはとても盛んで、
どの街へいってもそういうものには多数出会う
いっぽう、そういう魅力を放たない物件のほうも、
断然多くて、なお気になる
*
どんなものであれ、
この街が、廃墟廃屋空き物件をそのままに
しておく街でありたくない
と今も続けておもっている
*
そうありながらして、
3年前に執行した企画、廃墟キャバレー
その復旧時の家具を
どうしようもなく抱えて保管に困り、
途方に暮れている、、、
・・・ というより、
なんとしてでも機会をつくって企画しては、
しぶとく使っている!!
( 我々のやる企画のすべての内装クリエイションは、
だから絶対にキャバレー仕様だ )
家具の間借り先オーナーを探しながら、
いちいち迷惑をかけている!!
*
3年前、廃墟をふたたび廃墟に戻すあのとき、
なにかいい方法を手探りしたいのだと言い張って
せっかくみんなで磨いた家具群を
どうしてもゴミに戻したくなくて しぶしぶ買い取った、
その尻拭いを、
いまだに、自腹を切って、している ・・・・・・・
( 今回の浪曲喫酒もまた赤字報告よ! )
自分はなにをしても、どうもこう、、
アホっぽいなあ・・・
( ッ と悲嘆に暮れる間もなく、
すでにもう、次の企画の準備を洋々としている!!
どうだ参ったか!!ワッハッハ!! )
*
とにかく
なににもならなくても、
借り手がつかなくても、
解体されるのであっても、
建築物にはせめて空気を入れて
あるいは窓のひとつでもただ磨いて
ただ手入れを続ける行為が
必要におもえて
それが古い街区を要する街の、
古い街区ばかりでなく町全体の、
文化といわずとも、
気分または生き方と云えればよいのだと、
わたしはおもう
*
が自分に関していえば、
まだなんとなくアホっぽいので
寝癖ジャズ氏と上品ジノリ氏に
そのような大声を発することもなく
彼らの文化の発見にもこれといってなんら加担せず
数時間後にさようならと階段まで送った
*
もしまだ見つからないようなら
こんどいっしょに空き物件を磨きましょうと
お誘いしたいとおもう
ジャズとジノリの話をしながら
果報は掃除して待つべし
● ● ●