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毎度さま
函館旧花街、大門へのオマージュ
【 一夜限りのグランド・キャバレーの灯 】
使用予定の廃墟、復旧労働14日目!!
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先日、
かねてより早く依頼したかった、
出雲大社の宮司さんをお願いし、
封印されていた廃墟への立ち入りと手入れ、
それから企画を遂行するにあたっての仁義を切るために、
本格的なお祓い儀式をしていただいた
わたしは毎日、
おはよう、とか よろしくね、とか
今日もたのむよ、とか ありがとうね、とか
照明当てマース、とか
また明日もね、とか すごくキレイになったね、
・・・・・・ とかなんとかエトセトラ、
一日中、空間のあちこちに
喋りかけながら仕事するのだけれど、
おしなべてこれらの、打ち破れた廃墟空間は、
わたしにははじめから、
ウェルカムな愛の交流があった
が、
使用予定でない完全な暗闇のフロアなどは
わたしにも圧力を感じる多くの存在があるのも知っていたので
ヘッドランプだけで立ち入るときなどは、
「 どうもごめんね、お邪魔しますよ、
よろしくね、アイラビュー、 」 と挨拶していた
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廃墟というのは時を経るごとに、
場所とは関係のない邪気なども入り込んでしまうのです、
と宮司さんはいい、
とても本格的に祭壇をつくって物々しく、
建物の邪気祓いというのを執り行ってくださったワケ
これでみなさんも安心です
が
くれぐれも
場の歴史や先住民には
心遣りをどうか忘れないでほしいのです、
見えなくっても、
仁義というものはわたしたち、大事にすべきだとおもう
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おまえは本当に阿呆だ
阿呆だ阿呆だとはおもっていたが、
まさかここまで本格的に阿呆だとは知らなかった
とんでもねえ阿呆だ、
イヤ負けた、
俺は負けた、俺がいままで頑張ってきたことは
しょせん、全部、金で解決できる程度のもんだった
これは金じゃねえ、
イヤほんとにおまえは阿呆だ
阿呆すぎてモノがいえねえ、イヤまったく阿呆だ
筋金入りの阿呆だ
さちよ
おまえは本当に阿呆だ
キチガイ過ぎる
この企画は
死んでもヤレ、絶対にだ
死んでもだぞ
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この阿呆阿呆と100回くらい云うのは
わたしを陰から支えてくれる、とあるヤクザ的巨漢で
現場を見に来たとおもったら
目の前の道路のド真ん中に、さも暴力的に駐車し、
ドアを開けてノッソリと巨躯をあらわした
― ちょっと!ちゃんと普通に停めてくださいよ!!
と怒鳴ったら
「 うるせえ俺はこれでいいんだ 」
とかなんとか時代錯誤な法螺を吹きつつも、
しぶしぶ路肩に寄せた
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ヒャー、怖えぇ!
ばかかお前、ここは女がひとりで
ヘッドランプで仕事するような場所じゃねえぜ、
なにやってんの、
いったいいつもながら、そのテンションはなんなんだ、
キチガイもたいがいにしろ、
オオすげえ怖えぇ!!
じいさんばあさんばっかしじゃねえか!!
ステージにも椅子にも、
そこらじゅうにすげえいっぱいいるぜ!!
ブ厚い層になってやがる!!
― わかってるって
でもみんな大丈夫なんだ
大丈夫なヤツはわかるけど
大丈夫じゃねえのもたくさんいるじゃねえかバカ!!
ハァハァ!!
おまえは大丈夫じゃねえヤツを跳ね返してんだが
でも普通はだめだ
ハァハァ!!
これじゃ宮司さんでも怖かろう!
俺だったら泣くね!!
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などとさんざ騒ぎ立てながら
( このかたには宗教の心得があるので心配しません )
外に出てゼイゼイした息をととのえ、
過去にここらで大枚を使って遊んだころの
エピソードを大いに提供してくれりしていると、
「 噂を聞いて来てみました、感動です、
ここが復活するんですって、本当ですか、
イヤアわたしも懐かしいなあ、あの頃はねえ云々、、 」
と本日のあらたな語り部氏もあらわれたり
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吹き抜けのダンスフロアの高天井を飾る、
すばらしいシャンデリアを磨くために、
ローリングタワーや足場が必要
昔、このキャバレーには毎日入り浸っていたという
足場屋のダンディ社長あらわれて
「 ウウッ( 咳 )居るだけで鼻炎になりそうだ! 」
「 オエー、・・・・・ こりゃヒドいわ 」
と毒づきながらも足場の提供を約束してくださり、
ヨシ、と云い、笑って首を振りながら帰った
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向かいの小さな店の旦那が暖簾の奥から出てきて、
差し入れだよ、といって手作りのお弁当をくださった
「 うちのお客さんも
みんなで楽しみにしているからね 」
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ミッキーさんが持ってきてくれた高級なミネラル水は
とってもおいしかった
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みなさん本当にありがとう、
見てて、いま順を追って難関も突破するからね
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日曜日、もし晴れたなら、
ひたすらベルベット・ソファを下ろして、虫干しをする
どこかに ” フトン叩き ” が落ちてありますように
『 神様仏様なにとぞよろしくお願いします 』
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