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月の色
低空に懸かって橙色に沈み
雪がそれを凌いで真っ白にあかるい深夜の散歩
*
街路灯に輝くダイヤモンドダストに
気分がすこぶる爽快で
深雪をどこまでも歩いた
その翌日は、念願のテレマークスキーに
ゆけそうだったが断腸の思いで止した
夏に、
大きめの企画持込みがあるので
今年は、なるべくケガの可能性は排除
*
朝イチバンで体育館の筋トレ室へゆき、
長いストレッチと筋トレとラン、終了後に温泉、
その温泉の駐車場で
なんとなくわたしの胸を騒がすような
怪しい空気を連れた車がやってきて
ナナメ前にキュッと停車した
その独特に大きな車のノーズを見ると、
手作り風のエンブレム、
それは錨のマークだった
*
世を拗ねたような、
ひと嫌いのような、
少し背を向いたような、
旅の途中のような、
小柄で、それっぽい帽子を頭に乗せている、
寡黙な遠い眼を持ったドライバーは
・・・ あれは!絶対に!
マドロスだ!
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「 スミマセンおじさんもしや船乗り! 」
と車を降りて走り寄って
その高い窓をたたくとマドロス氏は
不安な白い眼をチラとこちらに向けてすぐに逸らした
がしつこく窓をたたいて
100ミリくらい開いたスキマから見おろす、
冷たい眼に声を投げる
錨のエンブレムがすてきですねおじさん!
おじさん船乗りなんでしょうおじさん!!
おじさんおじさんおじさん!!
*
「 ・・・ 昔な 」
「 どこの海へ! 」
「 ・・・ パナマとか、、、太平洋のずっと、、、 」
「 北洋漁業の逆? 」
「 うん、、まあ、、そうだ、、、マグロだから 」
「 マグロ!!函館のひと? 」
「 ・・ ヨコハマから、、、戻ってきた、5年前、 」
「 当時の函館は知っている? 」
「 、、おう、、凄かったな、、、にぎやかで、 」
「 函館は海の男で栄えたですね?
たとえば大門のキャバレーとかなんて? 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、
・・・・・ ああ! キャバレー!!
アアッなんだっけ!ミミミミミ、ミ、ミミ、ミ、未完成!!
俺あんた知ってる!ニュースで!おうおうおう!!
イヤ興味シンシンだった、思い出したっ!
・・・ もうあんたああいうの、やらねえのか?」
となって、
ここで窓が全開、、、
どころかドアまで開け放たれた ( ヒュー! )
*
・・・ やるさ、
” 青函帯( セイカンタイ ) ”
今年はかくかくしかじか!!こうこうこう!!
海の男たちの、出番!!
ついでにもうすぐその 「 未完成 」 の記録本が
出るんだから買うべし!!
おおお、イイ、イイイねえ・・・!!オール・ライト!
イイワ!乗るぜ、、
オオオオ俺の兄貴は北洋マンだった!
錨のエンブレムは名古屋で買って来て自分で付けた!
周りにも、引退した、ムッむかし海の男だった奴等、
い、い、いるぞ、、みんな来るべな、、
ペラペラペラ!ペラペラペラペラ!!!
( うぉっ! どんどん出てきた! )
*
わたし、なにをしてるかというと、
- 草の根運動。
わたしはあらゆる準備のスキマに、
ひとりひとりの名もなきひとたちにプレゼンを繰り返す。
開港150周年への祝祭をするなら。
今回わたしが喜んでもらいたいのは、
まずこの、名もなきカモメたち。
このひとたちに、奮い立ってもらう。
このひとたちに、ドキドキしてもらう。
そして名もなきこのひとたちの気分が、
みんなをドキドキさせるんだといい。
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昨日ある男が我が社へ突然やってきて
俺たちも 【 青函帯 】 に協力させろ、
( 対岸の )大間から船が来てくれるてえんなら、
たとえば俺たちの和船でお迎えに行く係とか!
なんでも、やるぜ
道具立てならなんだって揃うから!
大間からも船ががわざわざ来てくれるんだったら、
ちゃあんと盛大に函館が、お出迎えしねえば!
みんなで云ってたんだ、
早くあんたのとこ行って作戦組むべと!
・・・・・・ と大いに奮った
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開港150周年へのお祝い -
わたしがイチバン函館に云って欲しかったことを、
このひとたちはちゃんと理解してくれている
「 開港150周年は、函館が、ホスト。 」
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