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この日は雨
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市役所、開港150周年主幹課のN参事とS氏が
オフの私服姿で、我らがヨットマン達の虎の穴である
クラブハウスに来てくれた
なんだかとてもうれしい気分
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彼らをはじめとして主幹課のみなさんは
なんだかいちいち解決はしないとはいえ、
もう何度もわたしとの打ち合わせを設けてくださっていて
必要があればすぐに呼び出してくださって、
わたしの文句もいちいち快く受け付けてくださって、
( しつこいが→ ) 解決しないとはいえ、
タイヘン一生懸命に物事に取り組んでくれて、
「 解決しないとはいえ 」 、
とにかくこう、逐一の対話を進めてくれている
この日はここで、150周年とヨットマン、
ヨットマンとわたしの青函帯企画、青函帯企画と150周年、
、、、という連携の確認事項
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ところでここ!
” クラブハウス ” というと
たとえば横浜やスウェーデンあたりじゃふつう、
日焼けしてポロシャツのエリを立てたヨットマンや
エンブレムのついたブレザーを着た渚の紳士や、
さっき世界一周から帰港した果敢なマドロス達なんかが、
パイプの煙をくゆらせたりなんかしては
数々の港で別れた女たちを思い出したりしながら、
スキットルからスコッチを舐めたりし、
さも闊達な雰囲気で出入りする、
それはとってもオシャレで
スマートでカッコイイものなのだが(嘘)、
ここ、我らが函館のみなさんのアジトは、
外壁にツタ科の植物を這わせてごまかしてはいるが、
ただの工事現場の詰め所用の仮設ボックスで、
ずいぶんやたらと貧乏臭いし、
入り口付近にはいつも犬猫の糞や、
誰かがサンダルでそれを踏んだ痕跡などが必ずある
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わたし今回は
利休饅頭と赤飯とを差し入れに持参し、
少し遅れていつものヨットマン達のあいだに挟まった
市のひとも混じっての打ち合わせだったので
やけにかしこまったような
ムサ苦しい雰囲気だったうえに、
あいかわらず内装は
つまらない仮設の詰め所か用務員室みたいだし、
へんに居心地が悪かった
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そしてなんだかとくに解決もしないが
まあなんとなく互いを認識しあった、みたいな、
そしてまた結局、
いろいろなことはいつ明確に解決するんだろうか?
、、、みたいな会議をして、
まあ、どうなんだ? みたいなカンジで解散し、
市のおふたりは
じゃあよろしくといってフレンドリーに去り、
そのあとで速やかに、
すこぶる慣れた感じの、いつもの流れ、という風に、
またたく間に用意がすすんで食卓はナベになった
ナベというのは適当にできちゃうものでもあるが、
こんなに適当なナベもない、というくらい、
どうもこう、スピリットのない適当加減のナベだったが
まさしくその、
どうでもない、ハンパで曖昧な雰囲気が、
なぜかすごくよいんです
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そして話題は進みに進み、
脈絡が脈絡となって進みに進み、
わたしとっては半分以上
ワケがわからない業界ネタでありながら、
しんそこ笑わずにいられない場に、いつもなる
とんでもなく奇矯で暴発したような
怒涛の笑い声に満ち、笑いすぎてビシバシ周囲を叩き、
罪のない憎まれ口の数々と、
ほとんどがすこぶる下ネタだし、スカトロだし、
それはすごい
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我々、工事現場の肉体労働者なんてのは、
豪快で下品で率直でそれはひどいもんなのだが
ところが所詮、地面の保障された陸の生活者、
我々なんかかわいいもんだった、とおもう
彼らは海のうえの得体のしれない不安定な波が地面だ、
命も知れない、天地も知れない大波浪に揉まれ、
大海原での小さなキャビン生活、
ひとり、あるいは数人が共同生活をするんだから
ほとんど人間じゃなくなる
・・・ いいえ、人間になるのだな
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わたしはそのときなんとなく、
太古の時代にタイムスリップして、
原始人たちが火を囲んでくつろぐ場に
居合わせているんだような気になってきた
きっと彼らはこんなふうだったのじゃないか
こころの安全と、信頼関係と、
屈託のないリラックスが充溢したしあわせな場は
貧乏臭い詰所風情の内部で、
たいへんうつくしかった
いいなあ、
なにかを共有している者たちのあいだの、
安心感のあるバカバカしさったら!
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私事だが
わたしがなにより人生のなかでいちばん愛するのは、
工事現場で日雇い夫のオッサンたちや
ゴツい仲間たちといっしょにいて、
ただひたすら無意味でアホな話をして、
ブツブツ云ったり、ばかみたいに笑い合うときだ
彼らと共有するコンクリートやガラや
土や砂や粉塵や筋肉やら
疲労やらウデやら競争やらが、
信頼関係のベースにあるからだ
そのカンジを、懐かしくここで味わった
そしてわたしが人生で、いちばん辛いのは、
そういう日雇い夫のオッサンたちが、
食い繋げない姿を見るときだ
だからちょっと、
麻生首相には大胆に、がんばってもらおうとおもう
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・・・・ アレッ!!なんの話だっけ!
これからが大事な話をしたかったんだが、
戻れなくなったから失礼します・・・
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あっ思い出した、
ヨットマンの集う、もう少しマシなクラブハウスを
作りたいなとおもっていたのだけど、
あの様子を見て、なんかやめたくなった、という話です・・・
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