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オオ
晴れた裏通りを向こうからやって来るは
敬愛すべき
Mr.コネクター、
熱気に満ちた顔の持ち主
*
ちょうどわたし、集中して腹が立ッてるところです
誰かに何か喋らなくては気が済まない
- こんにちは、かくかくしかじか!!
「 おっと、おそらくさちよ君、
僕は文化を解するような男ではないけれども
君の云いたいのもすなわちこうだ、
( 以前に誰某から放たれた言葉だが、と注釈して )
” 経済は、文化の僕( しもべ )である ” と! 」
*
ワアッ!
びっくりだな!
そんな夢のようなことを大声で云ってくれちゃって!
コネクター氏、ハリツケにされないか心配だ!!
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それやこれやで
列車に乗って津軽へ
かの地との交流を進めてきているひとたちに、
この日はじぶんも加わらせてもらうことになった
- 初めてのおこないだ
青森へ渡るのはいつも、
トラック野郎ばッかりのスキマに入れてもらう感じで、
ワイルドで粗雑なSKフェリーに車を入れて4時間、
揺れに揺られて、わたるものだったし、
そのうえ土地へ留まったことはなく、
東京 - 函館間に通過するばかりの地点だった
*
列車のヒマさを有意義に使おうではないかとおもい、
ここのところ調べ物に夢中だったため、
片時も手放したくなかった本を4冊も持参したので
荷物が無駄に、重くなってしまった
( 結論をいうと、1冊も読まなかった )
*
青函トンネルに突入するまえの、
渡島当別( おしまとうべつ )や
木古内( きこない )、などというところその周辺、
あたりは山と森ばかりになるので
ふだん車を運転していてはワキ見ができないリベンジとして、
タップリと死ぬほどワキ見してやったが、
まったく山と森ばかりだった
あんまりどこまでも木ばっかりなので、
隣に座り合わせたひとにむかって大声で、
「 木だ!! 」 と云った
「 ・・・ ハァ~イ、、木ですねえーぇ 」
と赤ん坊を扱うみたいにやさしく静かに答える女性
なんだ、我ながら阿呆みたいだとおもい、
なんで木なんかに驚いたのか、
常から周辺に、ふんだんにあるというのに、
、、、と考えてガッカリした
なんだ木なんか
*
そのうち
隣の車両からワゴンガールがやって来たので嬉しくなり、
「 ハイ! 」 と手をあげて 「 珈琲! 」 と云った
絶対にロクな珈琲とはおもえないが
列車の旅ということで気分がものすごく新鮮になり、
やけにおいしくてスルスルと飲んだ
あっという間に飲み干してなおかつ欲し、
往復してきた同じワゴンガールに向ってまた
「 ハイ! 」 と手をあげて 「 珈琲! 」 と云った
・・・ どうもこう、
列車に慣れていない素人が
列車に付随するあらゆる現象に貪りついているみたいで
カッコ悪いようだとおもった
*
さきほどの山の件でも、
隣のひとに対して失敗したので
どれ、もう少し落ち着いた社会人みたいに振舞ってやろう、
などと考えつつ
ふと反対席側が目に入ると、
そこは地理的にはあたりまえなんだが海だった
そうしたらまた
あろうことか咄嗟に、
「 海だ!! 」 と大声で云ってしまった
......。
「 ・・・ ハァ~イ、海ですねえーェ 」
と、ゆっくり答えてくれる隣の女性
・・・・・ 恥づかしい
*
海なんかなんだ
函館では毎日見ている!!
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まあそんなで他所の陸地へ上陸
*
太宰治の ” 斜陽館 ” を見かけてきた
五所川原市旧金木町にあって使われているね
外観だけ、チラッと。
旧金木町が所有するという
古くて威風堂々たる木造建築 -
ショック。
藍暖簾に堂々と、
「 築百年 」 と白抜きされてあった
憮然としてバスに乗る
*
「 築百年 」、
なぜこれに敏感であるかというとだ
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函館は平和な幸坂の途中にある、
くだんの旧ロシア領事館もじつは来年が来ると、
築百年だ
かたやこちらの
函館市の所有する築百年、
構造は、上記の木造と違ってレンガ組石造だが
( 一部木造部がステキにくっついてる )
いま廃墟となって荒廃し、ひとの立ち入りが禁じられている
*
設計はなんと、
建築を愛するひとならその名を必ず知っている、
ゼールとデ・ラランデによるという!
彼らについては、
あえてここでわたしなんかが詳細しないが、
そうと知ってから観れば、ああなるほどとおもう
函館はスゴい築百年を持っているッてもんだ
*
それがこの10年間を、
不本意ながら廃墟として立ち尽くすがままにされていた
手入れされない10年間の無人は、
建物にとっては致命的だ
見るに見かねたKK女史※ 、
※ KK女史 - 東京と函館とを行ったり来たり、
半分ずつ過ごすというライフスタイルを長く保ち、
たいへん魅力的な婦人でわたしも以前から好いている
その女史が市民有志を募って動き始めたのだぜ、
ということを、仲間の某社長から聞き知った
*
市としても
一般公開できるまでに
建築も機能も復活させることを課題としていま、
明示しているが、
耐震や消防にかかわる法律がすでに適合せず
数億円を要する抜本的な改修工事の必要があるという
*
近々、
市の立会いのもとに
有志立ち入り日が設けられた、くだんの築百年、
いかに。
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来年予定している、海峡まるごとの企画に
津軽半島のひとたちの協力が必要となるので、
相手を知り交流を持ちたいとおもい、
このたび渡ってみた津軽
*
津軽海峡に存在する、
生態系を画すというブランキストンラインを超えると
人間の背丈がやたら大きくて
出会うひとは全員、
友好的な巨人ばかりだった、
きっと地面がとてもイイんだろうとおもう
見知ったひとが、ひとりでもできると、
その土地はがぜん意味をもって輝きだすものだ
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復路は
噂の未来的高速船で函館へ戻った
ワイルドで狭くて粗雑で4時間も所要する SKフェリー贔屓を
消し去るつもりはなかったのだけれども、、、、
かの高速船、
1時間40分で着くうえに、
あんまりエグゼクティブめいた設計がされていて、
素直にスバラしくて気が変わった
*
函館のうつくしい陸地と港景がパノラマに迫ってくると、
( 従来の船ではこうは見えなかったわけ )
わたしは興奮して、
どうどうと血が沸き立つ感じがした
きっと、高田屋嘉平とはこのことだろうとおもう
否わたしばかりでなく、
船にいた全員が、嘉平だったろう
半分笑った顔のままそれぞれに興奮しては
黙って前方を、長いあいだ注視した
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かつて
船から港へ入る海の者は、
そのうつくしい港町ごとに武者震いし、
港で船を迎える陸の者は、
客人たちの訪れに喜び狂った時代があった
港町特有の活気、
あるいは洗練、頭の回転、知恵、感受性、というのは
きっとこうして、
なんども受ける血のざわめきや、
細胞の刺激、沸き立つ感情の交感、エトセトラ、、
というもので出来ていたのだろう
*
いまは違うね
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あなたは
またそういう光景を、見たくはないかい?
( ... と、来年のプロモーションをする )
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