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黄昏時のカウチで狭々と
場所を取り合ってしがみつき、
互いにそれぞれ真面目に本を読む、
というここ数日の至福から離れ、
飛行機に乗って。
わたしたちの棲家であじわう黄昏の陽は
空から見るのなんかよりずっと上等なんだけど
それでもやっぱり夕刻のフライトを選ぶ。
東京は雨だったが
すべての雲のうえは晴れ。
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東京を離れるとき、
密度の濃い、晩春の緑の匂いが
先日の赤坂の御山一帯に充満していたのをおもう
( スパルタ自然児ハイタカ先生によると
それはクスノキの匂いだという )
へえ、あれはすでに匂いというより春の言語
ああ
雨が降ったってよかった
傘をさしながら
オー・バカナルのテラスでジョッキに雨、
それだってよかった
*
この季節は
角を曲がった途端に空気がヒヤッと変貌するとか
夕暮れにいきなり街が異国風の喧騒に変わるとか
夜の湿気にじっとりとたなびき出す花々の香りとか
ぼんやりと間延びしていつまでも夜が終わらないとか
そういったさまざまな不思議を醸し、
数々の頭を狂わせる。
そうでしょう。
*
戻って来る頃には梅雨だ。
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というわけで昨夕より函館に居ます。
東京以上のカンペキな春!
ヒュー、 ヨ~ロレーリッヒ~ッ!!
うつくしくカーヴするウェストコーストの地形に沿って回旋し、
優雅に滑走路へすべり降りる窓外に
淡い緑と真っ黒な春の土。
土下座して拝みたい気分にひとり、盛り上がりながら。
海にはカモメ、それと光。
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滞在は以下によります。
1.なぜか T 氏が、
現物を見ることなく、スペックも知ることなく、
【 あの男 】の手引きで買うハメになった VOLVO を引き取りに。
これに乗ってわたしは東京へ戻る。
2.↑ 1.の件から派生した、秋のジャズの企画準備
( ジャズも非ジャズも、便宜的にジャズ、
これは我々のスピリットとしての )
3.出稼ぎ( こちらも仕事が沢山!! )
4.前日に、Bar の I 氏が誘ってくれた、
Walter Lang Trio 来日ライヴ、今夜。
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昨夜のうちに、相談事や悪巧みをしに
あちこちまわり、最後は コマヤ氏の店で夜が明ける。
ねえ秋のジャズ企画当日は
もしや中秋の名月ではないだろうかね?とおもい、
そうだったら月を交えたイベントに仕上げたいねといって
月齢がいくつであるかを調べてもらったが
残念ながら朔月であった。
が、じゃあそれなら星がたくさん見えるってことで、
それはそれでおおいに盛り上がり、
わたしはひそかに鳥肌を立てた。