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大工のトイっちゃんが
あちこちで先夜のジャズを言いふらしてると見えて
あちこちから、電話があったりした。
- さちよ 、どんどん俺を若返らせてくれ!!
って、
たくさん一緒にいろんなことをしたね。
ハッハッハ。
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じわじわと溶けてゆく
この感覚がやってくるまで、わたしはここに馴染まない。
じっと待つ。
うんざりしたり。
辟易したり。
哀しくなったり。
ゲンナリしたり。
がっかりしたり。
絶望したり。
虚無が来たり。
home、ゆえにあまりに多くを孕んだ土地で。
相対としてそれを見ると、
饒舌な感情論に凌駕されてしまう。
じぶんの居る場所に、
比較の対象を持たないように。
・・・・ というようなことを先夜、
Bar Share' s のカウンタで、旅人と話し込んだね。
ハモンを削いでもらいながら。
立てばまた茫漠の地平 - 。
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朝、札幌への汽車に乗る母を送ってそのまま、
流山温泉へ参じる。
なんたってこの度は、会員券を発行してもらったんだ。
近場ではダントツに好きな一軒。
晴天、
固く締まった路面の雪の、明るい林道に
【 All of me 】 を入魂で歌いながら蛇行。
着くと、暗い脱衣場のきょうのBGMは
アートブレイキーだった。
mother Mountain の媚態を眼の前にして
顔が寒すぎて死ぬかとおもった露天風呂。
『 環境を守るために、
このオリーヴの石鹸を使用してください。 』
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わたし、温泉のあとは必ずプロテインなんだけれど、
きょうは地ビールにする。
森さんの店までガマン。
こうなるとやけに遠いじゃねえか。
渇き死にする、 All of me !
薪ストーヴにくっついて、ボワーッとしたまま、
ゆっくりと飲み干す。
薪ストーヴの火は、暑過ぎなくて、肌合いがいいよね。
・・・ と云おうとすると、あらたに薪をくべられて、
もう燃え上がるほどに暑過ぎて、死ぬかとおもった。
は、肌合いが、いいよね...。
で、このあと、帰る?
帰らない。
いま、おとこたちは氷の湖上で
いよいよワカサギ釣りの小屋を建造しているんだもの。
*
先日のワカサギ大会では赤字だったであろう W.に、
お礼を持って立ち寄る。
地ビールも飲んだからには、もうなにか食べる。
食べるし、さらにかさねてビールも飲む。
プロテインを抜くと、
わたしはいかにもこのように、
だらしのない身体への一歩と雪崩れゆくか。
- ねえパイのポットにさ、ソイ(魚)入れたやつあるかな。
- 今年はソイがないからホタテね。
こないだはあのあと、ジャズに行ったんだって?
トイっちゃんが騒いでた。
薪ストーヴから離れて座り、
カナディアン造りの隅っこに身体を詰め込んで小さくなり、
壁( というか屋根 )に同化して、
店主から借りている夏目漱石を、ボワーッとしてめくる。
エンヤが降ってくる。
雪みたいだ。
*
隅っこのイデーが浸透してきた。
隅っことは、こうなのだ。
隅っこは隅っことして、とても、満たされていることがわかった。
完璧に。
すばらしいな。
視界もいい。
隅っこを、まっとうしている。
( つぎは真ん中をやってみようとおもう。 )
客が入ってきたけれども
隅っこであるわたしには気づかなかった。
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いくつもの道、いくつもの道。
いくつもの道を、やれ。
ぜんぶ、合ってる。
いくつもの夜、
いくつもの夜を見よう、
少しずつ思い返しては、
ほんのり暖かくなるような。
極上の、夜の、空気。
極上を、選り好みして。
いつまでもいつまでもいつまでも。
あんなふうに、話そう。
( 今夜、雪、止まない! )