■
濃い珈琲
窓外にせまる裏山の傾斜
針葉樹林の暗み
魔法のように咲く白い山こぶし、
斜面に薫る、春の、黒い土と花々
*
誰も居なくて
低くまわるレコードから
ラ・ヴィ・アン・ローズ
庭のさくら
一陣の突風
窓に向けた顔の左側へ
じんと身近に射してくる陽と
遠景の牧場を明るくしている陽とは同じもの
店主が食器を洗う音
*
疲れを癒すのは、
やはり酒や肉ばかりでなくてこういう物事
■
朝のジムで
やかましくてストレスフルなJポップ調のラジオから
めずらしくショパンのワルツが鳴ったとき
わたしの他に2人のマッチョが
バーベル・ワークに鼻息を荒げていたのを
三者互いにピタリとよして
じっと聴き入るともなしに聴き入った
のち
ふたたびDJのトークが始まると
わたしたちも
バーベルを床でダンと云わせたり
鼻息をフンフン鳴らしたり
ンガッ!!などと呼吸を入れたり
ボタボタと汗を落としたりして音声などは聞こえなくなる
そしてまたのち、
今度はジュリエット・グレコが美麗に喉を鳴らし出すと
なぜかやっぱり、その曲のあいだじゅう、
トレーニングルームがしんとした
*
ああ、さはやかな朝のひかり
マッチョをすら鋭敏にする、うつくしいものと、その気分
( イエ彼らはただ、
「 チッ乗らねえ音楽だぜ 」 とおもって
手を止めただけかも知れないがイイのです )
曲が終わるとまた互いになんとなく
それぞれの持ち場のワークアウトに戻るとき
そこになんとなく照れたような雰囲気がみなぎるのも
なにかをシェアし合った証となって、
気分がよいではありませんか
■
ITG氏のガレージ( 前出 )
古くて、長い間使われていなかった建物を
プラス方向へ活用しようとするとき、
建物が現状マイナスになっているとして、
それをいったんゼロクリアまで戻す、
地道で膨大な前作業が必要となるのだが
マイナスのまま発進してしまっていると
すべてが後ろ手にまわってしまい、
さらにタイヘンなことになるわけですが仕方がない
( しかも今回は準備が短期間で、
連日深夜から明け方作業気味なカンジに。 )
*
とにかく御仁がここに
どういう順序であれ、縁あって
強い理想をともなって風を入れたことは、
とってもすてきなことだ
*
古い建物にはいつも必ず
ビジネスではまかない切ることのできない、
重要な部分があって
それは愛とか対話とかいう名の、
地道で息の長い、手入れのことだとおもうのです
*
※ ↑ロゴ・プラズマティック・スチール出所は筒井氏
とっても時間はかかるでしょうけれども、
すてきな場所に、なりそうですよ
( 腰が痛いよね )
※ ITG氏のブログ
● ● ●