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時のハザマ、、、とか
時間が止まったような、、、とか
ノン、そういうものではない
いわば、カウントされない時間、のようなもの
時間外?
だけれどもそこは
その時間というものが際だっていて、
時の侵食から外れることは決してなく、
むしろそれを注視してしまうように感じるところ
大門にある古い喫茶店M...へ
*
なんとなく大門の様子を
見たくなってときどき界隈を覗きにゆくと
そのたびに大門のどこかでは、
いつもの解体屋の腕のイイ重機オペが
あらたな古物件の解体に着手して、
ユンボの腕をふるっている
ああ、とうとうここも壊されたか、と
オペさんにいつものように合図を送ってから、
持ち歩いているハンディカムをまわす
- いいなあこの解体屋、すんごく儲かろう
・・・・ と、頭の中で見積もりを出してみる
*
あの更地も、あの更地も、
あっちの更地も、そこの更地も、ぜんぶ、
去年の夏からつづけて、
建物を壊しているときにわたしはたまたま
あれもこれも目撃し、立ち会ってきた
現場に近づいてゆくと、
ユンボのオペ室に乗っているのはいつも同じ、
スキンヘッドにヒゲに三白眼の、コワ面のオッサンだった
「 オペさんキャメラまわしていいかい! 」 と怒鳴ると、
毎度すんごく怖い顔のまま、ウンと云った
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古い喫茶店M...
こんちわ、といって座る
*
いつもの
オッサンズの面々が入れ替わり立ち替わり、
競馬だか競輪のTV画面や新聞を見ているのと、
隅っこで囲碁をさしているのと、
オーダーもせずただ出たり入ったりしているのと、
老猫が椅子に座っているのと、
マスターのホフマン氏が上目にひとを見るのと、
もう何十年も、
変わらないとおもはれる光景をなしている、
なんというかこう、、、
・・・・ 生成り色の時間
*
さんざ沈黙を喫してタイムラグがあり、
おもむろに隣人が新聞から顔をあげる
「 アンタ、去年ずっと作業着で暮らしてて、
正月に着物で歩いてて、いま洋服の、あのアンタか? 」
- ニホンゴ、スゴクヘンヨ
「 着るもの統一してくれねえと混乱を来たすからよう、
作業着なら作業着、着物なら着物、洋服なら洋服、
ってコスチュームはどれかに確定しろよね、毎回 」
このひとたち、
いつもここでどんな会話をしてるかというと ;
*
「 ハーァ、、、
マスター俺の番号これね、
これで出して 」
「 ・・・・・・。
ハイ却下やり直し、
名前も時間も金額も入ってねえよ 」
「 ブハッ!アンタもダメだねえ、全部ヌケてるよ
俺はやらない、博才がないからね、あんたと違って俺は 」
「 うるせえなァ横ヤリめ、俺だってねえよ、
見ろよこのヤセ細った身体を、イイとこなんもねえ 」
「 痩せたかよ? 」
「 イヤ嘘。太りました、腰が痛てえ 」
「 だいたいサ、
俺たち立ったまま靴下はけるか? 」
「 エエエッ!?何だと?
誰がそんな突拍子もないこと考えるワケ?
立ったまんまで靴下だってよ、奇抜だね、ヘッヘ、
だいたい俺ァ、立ったまますることといったら小便だけだね
でもよこないだ、ひとんちでトイレ借りたら奥さんが、
どうやってしますか、てェ訊くから、
なんだヘンなこと聞きやがる、立ってこう、と云ったら、
あわててマットやらなんか、片付けられたぜ、
小便も立って出来ねえ、俺はもうダメだね、なーマスター 」
「 パソコンだろ、携帯電話だろ、
歌はゼンゼンついていけねえリズムだろ、
あドリカムはわかるよ、ドリカムはね、ドリカム!
小便も座ってしろだろ、ハー俺はもう、用がないの
世間は俺に、用がないの、アアア俺はもうダメだね 」
「 姉さん何歳、35? ハァン、すぐだね、
俺たちみたいになるの、一瞬でね、30代から50代まで、
一瞬すぎてなんにも覚えてないよ、
なあそうじゃねえかマスター 」
「 俺63、あっち72 」
「 俺はまだ60 」
「 あのひと80近いよ 」
「 ああなんにもヤル気がしねェね俺は、俺はね
人生なんでもなし! 」
「 マッ!!これが気持ちよくもあるんだけどナ、時にね 」
「 ところで俺きのう
3軒ハシゴしてぜんぶで合計三千円だった 」
・・・・・・・ エトセトラ!
*
「 わかるかよこの虚無
ワーーッカンネーダローナー 」
- ものごとは紙一重だから、少しね
、、、でもここに居るのは好きなの、
「 べえーッツにィィ、好きなもんか
珈琲だってね、
ぜえええーんぜんすきでもなんでもねえね、俺はね、
ただね、無意味にね、無意味に!!居るだけ 」
- したいこと、もしくはかつて、したかったことは、
「 ない、なああああんにもない!無意味!
でも転職は10回した、転職はすべきだみんな、10回
アレもやったしコレもやった
仕事のね、基本はぜんぶ一緒だからね、10回とも 」
- どうなるなら、しあわせか?
「 なあああんもナイ!!いつ死んでもイイ! 」
- 好きな食べ物は
「 べええええっつにナイ! 」
- 歌は好き、
「 ・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・ 大嫌い 」
- なんですか今の沈黙
「 ・・・・ 今
・・・・・・・ ここで俺が、
間違ってスキだとでも云ったら、
どうなるかワカッタ、ハッハ、だろうだろうだろう?
アンタ、俺アンタに何に巻き込まれるかワカラねえよね?
なんか、このカンジ?
絶対にそーだろう?ナニ企んでんだ?
なに?このインタビュー形式?なんか危ねえ!!
俺はできねェよ、なああああんにもできねえ、
なあああああんにもイイとこねえ、いっさいできねえ!!
俺はダメだぞ!なんの役にも立ちませんからね! 」
- バレたか
「 なにやんだよ! 」
- イヤべつに
「 なんだよ云えよ! 」
- いいよ
「 云えよ云えよ云えよ! 」
- ・・・・・・・・!
「 ・・・・・・!! 」
- ・・・・・・・・・・・・・。
「 ・・・・・・・・!!! 」
- ............ 。
「 ..................!!! 」
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