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ここ、
紫陽花マーケットをしている夜のテラス
ひとが、シルエットになって通り過ぎるのが愉快
じゃあここで書き物をすることにして
開口部が放たれてあり、
夜の薄い風がすうすうと通るので
バドワイザをもらう
夜の風とはちょうどよい相性で、スルスルと飲む
*
気が狂いそうなほどの
たくさんの種類の紫陽花に囲まれた庭に
若い両親に連れられて
コットンのキャミソール姿の少女が飲むミルク入り珈琲
彼女は
この夜の不思議なお出かけと夜の風とを
おとなになってもくり返し回想することになる
*
物事が先へすすまないとき
わたしは昔の日記を何度も読む
そのことは、やはり物事をすすまなくさせるし、
かつての日記といまとを鑑みても
やはり物事はすすんでいないことを認識する
だめだこりゃ
*
ここのところ
謎なるものごとに心を奪われちまって
昔のノートを繰るばかりだ
いつか書いたメモ ;
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わかってしまうこと、伝わってしまうこと
わからなくなってしまうこと、伝わらなくなってしまうこと
わからないということがわかってしまうこと
伝わらないということがわかってしまうこと
見えてしまうこと、見えなくなってしまうこと
受け取ってしまうこと、受け取れなくなってしまうこと
呼吸が浅くて、心も重く
水
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救いは、それらのことごとくが、
じぶんだけのものではないということ?
万象とおなじ感受体であるわたしたちは、
すべての要素から、あらゆる印象や記憶などを受信する
どんなに離れた要素どうしも、
瞬時にしてあらゆる要素を媒介にして、伝達される
じぶんが感じたり考えたりしているとおもっていることが
じつは他の要素が発した印象だったり
それらの神経回路的な、流れ
わたしは、満足する。
わたしは、満足しない。
やっぱり満足する。
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ヒポクラテス・メモ
世界の 「 交感的な 」 要素どうしは互いを探し求め
惹きあうものだとして曰く。
「 ものごとには共通の、ひとつの流れがある。
ひとつに息を合わせている。すべては交感しあう。 」