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- 借景、
ここのヴェランダから見える光景はすてきだった
*
隣の地主の庭にあった、
南国様のフェニクスが全部で2本、
いつのまにか切り倒され、
気に入っていた景観がすこぶる悪くなっていることに
最近、気がついた
さらに!
数百m向こうのランドマークであった、
すてきに上品なピンク色をした、
どことなくブエノス・アイレス風の古いマンションに
いつか足場が掛かって
しかるのちに外壁塗装工事が終わってみると、
どうしたことか!!
並みのものと見分けがつかない、あまりに凡庸な、
安全極まりないベージュ色に塗り替えられ、
建物は周囲とカムフラージュされて見えなくなった
最上階ペントハウスのテラスを
緑や花々で満載にして、
開口部にはオーニング( 日除け )までつけてあり、
デッキチェアで夕暮れのビールを楽しんでいた主人らしき人影も、
近ごろスッカリ見えなくなった
*
隣の地主の庭と、ピンクメゾンの屋上庭園とは、
わたしの密かな西陽の時刻のたのしみだったのに
遥かに池袋サンシャインと、Mt.FUJI の威影も手伝った、
それは良いロケーションだったのに
*
フランスでいちばん小さな村、
その村の村長は、古い古い村のすべてを愛していて
毎日、村を歩いてまわっては、
古い建物や横丁を愛でて過ごし、
異変はないか、住民が困っていないかと気遣うんだけれど
曰く、
あるとき、
心ない者が( 否、心遣いはしたみたいだ )
自宅を改修した際、
どうにも滑稽な、「 古くしてみました 」 というカンジの
※ そう、近代日本の
「 メルヘン的新興住宅事情 」 と変わらないカンジの
フェイク的新建材で竣工してしまった!
毎日その道をあるくとき、
ことにお気に入りだったうつくしい曲がり角に
位置していたその物件が、
かくも醜悪な体裁を露出したことに村長はガマンならず、
「 こりゃひどい!爆破しちまいたい気分だ! 」 だの
「 出てきたらぶん殴ッてやる 」 だのって息巻いて
かなしい怒りを秘めて毎日
そこを通るハメになった、
スゴク身体に悪い
*
わたしはこのとき函館をおもう、
( 函館のような ) 風致地区を擁する街の市長は、
かならずそうあるべきだと、
常々おもっている
日夜、街をあるき、愛情にわなないて、
どんどんぶん殴って、
発破してやると息巻いて、あるくべきだと
常々おもっている
*
以下、市長は毎朝これに唱和するべし、だ
- なんだこれは、却下、
- この色はあり得ない、ばかか?却下、
- この看板はひどすぎる、却下、
- これは醜悪、言語道断、却下、
- みやげ屋?もう金輪際いらん、却下、
- なにアルミサッシュに変える?却下、
- サイディング下見板?とんでもない、却下、
- あの駅!デンマーク鉄道提携デザインだ?却下、
- この店、ネーミング却下、
- このドア、ヤメテクレ、却下、
- 街じゅうの窓ガラスが汚れている、怠慢、
- この照明はうつくしくない、却下
- おんなが全員ブスに見える!蛍光灯禁止、
- なんだって、良い改修には金が足りない?
金が無ければ刷りなさい、だ
発行しようじゃないか、ハッハッハ!!
- ここは君、よりにもよって函館なんだぜ?
、、、とかなんとか
*
...怒られそうだからもうやめます