■
ああ...
雪のない東京には、どうしても帰りたくない
・・・ と
500回くらい考えながら
今シーズン最高といえるコンディションの斜面を
狂おしく猛スピードで( 破れかぶれに )
テレマーク滑走しているわたし...
*
ひといちばい、あちこちで
テレマーク、テレマーク、と騒ぎ立てていたから
まるで今シーズン中にもう、
40回くらいは滑ってかなり上達しているんじゃないかと
我ながら思い込んでいたほどだけれども、
ところが今日でようやく4回目のテレマーク・スキー、
( なんとそれも1ヶ月半ぶりの )
東京へ発つ前の、
未練がましい最後のチャンス
2月はいちどもロクな雪が降らなくて
たとえ山の上には雪があったのかも知れなくても
視界に入る山々はことごとく黒斑が出ているし
そうして東京へ帰るときが来て
もう冬を、すっかりあきらめたのだのに
いきなり
このばかな雪がまるで、
「 今から冬本番入りマース!! 」 といって
忘れていた腰をあげたみたいにして
いつまでもいつまでもしんしんと降り出して降りつづけ、
おおげさなことに、まだまだ降りやまないで、
ふたたび世界がぜんぶ真っ白になった
そのうえさらに白を重ねに重ねてまだ尽きない
ばかじゃないの、雪
明日はもっと最高の山になって
そしてわたしはそこに居ない!!
*
わたしは今日、昼間に最後の雪を喰ったなら
温泉に浸かってから今夜の青函フェリーで
津軽海峡をわたって東京へ向かうと決めていたというのに
ついキャンセルしてしまったよ
その証拠にいまこうして
こんな日記を打ち込んだりなんかしている
*
「 雪と風がひどいから全便欠航ですよね? 」 と
フェリー乗り場へ電話してみると
「 イイエ、全便通常運航ですが? 」 といわれ、
でも待てよ、
海峡を渡れても、東北地方が大荒れで、
きっとハイウェイは通行止めなのじゃないかな?
とおもって確認すると、
それもなかった
- チッ
イヤそういえば、
運転して帰るVOLVOがなんとなく、
オイル漏れしているような気がするので、
明日、念のためにディーラーで点検してからにしよう、
ということで、
やむをえず今夜、
東京へは、発ちたくても発てないことになった
( さっき決まった )
■
長い白髪の毛を、
ウィリー・ネルソン風のおさげにした老婦人が、
雑踏を背景にして、紅茶を飲んでいます
清廉とした無国籍な空気と
掃除の行き届いた部屋に住んでいるであろうような
その彼女の澄んだ風情は
おもはずあとをつけてみたい衝動にかられます
*
いくつもの夜を冒して
もう幾年も過ぎ、
夜の魔法の種明かしがされて久しい
夜の果て、夜の底、夜の隅々、夜の裏側、夜の奥、
夜ということ、夜であること、
いま、わたしは夜に未練はない
夜なんて
アレはナニ、書割だよ
秘密などない
わたしは早朝の薄いひかりのなかで
仕事の途中や
旅の途中のひとの
眠くて不機嫌な、あるいはすでに冴え渡った、
通りすがりのそれぞれの笑顔を見て過ごしたい気がする
そのための、
ちょうどいい場所をみつけた
きっとウィリー・ネルソンの彼女のごとき、
無国籍な、とある北の果ての人物、みたいな顔を、
わたしは持てるだろう
*
『 途上 』 ということがすきだ
ながい国道の
ながい朝焼けの
旅の
人生の
ある思索の
途上、、
通りすがりの
面々