ダサいことに、
ノロウィルスに罹患してしまった
これは、その長くつらい闘病記です
まだこれから罹患にそなえる人は、
読んでおくと参考になりましょう、
えー 号外号外
------------------------------------------
■
ある朝、
ベッドから起きて3度にわたって吐くと熱が出て、
そのまま起きられなくなり、幾日も日付が変わった
12月なんかに用事を押して残しておくと、
必ずろくなことにならないから
はやいうちから、すべてのプライヴェートを返上して
さっさと済ませておきたかったが間に合わなかった
函館の仲間から、
イケアでの買い物もどっさり、
指示されたところだったりしたが、それもだめだ
*
胃痛、というより
体幹部が、体腔( たいくう ) とでもいう、
いち器官になってしまったかのように感じ、
臓器はなく、孕んでいるのは暗澹
空気で膨らまされた人形のような胴体になり、
その空洞を擁した体腔のいち部分にある鈍痛が、
すべての通奏低音のように離れないまま
風邪なら、
熱を出しちまえとおもうので
なんどもなんども大量の汗をかくようにし、
ヴィタミンが欲しいので、
ここぞとばかりにたくさんのフルーツを仕入れたし、
野菜と肉とにんにくもたっぷり仕入れた
*
< 1日目 >
・ 朝に3回吐く
・ なにも食べられず、
夜になってようやく、イチゴの一粒だけを
・ 熱がさかんに出る
< 2日目 >
・ イチゴとリンゴ、ほんの一切れずつに
少しのヨーグルトをからませたのと、
夜、卵のお粥
・ 絶対といえば絶対に、具合は悪いので寝たきり、
とはいえ、
なぜかなんとなく動けるので掃除と洗濯と、読書はする
・ ベッドの横に本をたくさん積み上げて
小さな手元の照明で本を読んだりするのは気分がいい
治ったかな?とおもっていると熱が出たりする
・ 具合が悪くなったら、そのままいちいち寝る
・ ときどき熱
・ イソジンでガーグル
< 3日目 >
・ イチゴとリンゴとバナナとアナナスとに
ヨーグルトとシナモンパウダ、
寝込んで筋肉を弱らすわけにゆかないが
プロテインが切れているので牛乳、
夜、Tボーンステーキを2切れ
ああタンパク質が食べたい
・ 折良く、というか折悪しく、
マンションの長い修繕工事が終盤となり、
この日から鳶職たちが
ヴェランダ側の足場ネットをはずしにかかると
これまで忘れていたうつくしい西陽が
このチョコレートブラウンに塗った寝室に射す
まるでホテルでゴロゴロするヴァカンス
フルーツはたっぷりあるし
・ なんとなく動けるから
あの西陽の刻限にちょうどいいカフェにゆこうかとまでおもう
でも起きると
床という床を全部、
ツヤ黒の硬床に張り替えた我が家は
いちにち掃除しないとホコリが目立つので掃除、
チッ、なんて床ばかり広い部屋かと
このときばかりは忌々しくおもう
・ しばらく起きて、治った治ったと調子に乗っていると
だんだん息が切れてきて、腰が曲がり、
立って居られなくなるので寝る
・ ときどき熱
・ イソジンでガーグル
< 4日目 >
・ クロワッサンに牛乳を浸したのとグレープフルーツ、
夜、精をつけるために具沢山の味噌煮込みうどん鍋、
業務用で仕入れた手羽餃子、
さらにハーゲンダッツのアイスクリーム
・ 身体があいかわらず空気人形みたいだし、痛い
・ だけどなぜかなんとなく動けるので掃除と洗濯と読書
・ そして明日は治るからとおもい、入浴
・ イソジンでガーグル
< 5日目 >
・ バゲットにチーズ、フルーツどっさりにヨーグルト
夜、ローストビーフ、野菜とニンニク入り温麺
ペリエたっぷり
・ 熱だし、風船みたいだし、痛い
・ だけどやっぱり動けるので掃除、洗濯、読書
・ これはサボりなのではないか?とおもい、
なんとなく仕事の準備
・ だけどやっぱり具合が悪いので寝る
・ ある悟りが来て、これは治らないだろうとおもう
よくもならず悪くもならないように見えて、
悪意ある、居座りを決め込むなにものかがある、とおもう
・ 夜、体腔の暗澹に激痛、死ぬかも
( ペリエの炭酸が体中で破裂して穴をあける感じ )
・ 2度の下痢
< 6日目 >
・ フルーツたっぷりにヨーグルトにシナモンパウダ
・ 近くの内科へ2時にゆくと3時からですと云われ、まつ
ようやく3時になり、どうされましたかと訊かれたので
「 吐いて寝込んでいます 」 というと、
「 ハッ!うちはちゃんとした内科ではないので別の病院へ
行ってくださいませ 」 といわれて移動すると
うちは4時からです、といわれたので帰ると、
マンションのエレヴェエタがダイノック工事で停められており、
高層階までのろのろと這ってのぼり、
4時になってまた階段をのろのろとおりて病院へゆく
・ 入り口の小窓でどうされましたか、と訊かれたので
「 吐いて発熱して寝込んでいます 」 というと
下痢は、と訊かれ、
「 それはきのうありました 」 というと
どうぞなかへ、といわれたので
マフラーと上着を取ろうとすると、
医者がそのまま、と云い、患者をそこに立たせたまま、
看護婦が、「 嘔吐、熱、下痢です 」 と申し送るのを聞いて、
居合わせた看護婦たちがクスッと笑った
医者が、立っている患者の額をピシャッとひっぱたき、
「 まあ最先端にいるっちゅうのはたいしたもんや 」 といい、
注射するかしないか考えなさい、といわれ、
看護婦に、するとしないとではどう違いますか、と訊くと
「 たいして変わりません 」 といわれ
医者が横から、「 じゃあしないで薬で治しましょう 」 といい、
そっちで食事の指示を受けなさい、いいですか、
この病気は薬と食事で治すものですよ、よく守りなさい、といった
食事ならしっかりしてあるので、自信があった
きっと褒められるとおもう
その紙にはこうあった
『 ・ おかゆ( 梅干以外なにも入れてはいけない )、
・ うどん( だしでよく煮たもの、
一切なにも入れてはいけない )、
・ お湯、うすいお茶
上記以外の一切を口にしてはいけない 』
いいですか、
乳製品ダメ、果物、柑橘類いっさいダメ、肉野菜ダメ、
パンもダメ、アイスクリームや冷たい水やジュースダメ、
外出、入浴、絶対にダメ。
これを守れば、一日で治ります。
わたしは寝込んでいるあいだ、
ひたすらフルーツとヨーグルトとパンとチーズと
牛乳と肉と野菜とアイスクリームとペリエとを消化してきたのです、、
あああなたそれは自殺行為ですね、
ぜんぶ間違っています、ひとつとしてただしくない
いいですか、この病気は死ぬんですよ
でもこれで助かりましたね
・ 夜、素うどん
処方されたアンチ・ウィルス・パウダ
・ フテ寝
< 7日目 >
・ おかゆ
アンチ・ウィルス・パウダ