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天国から帰ってきたところ
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J.ジルベルトの余韻で
有楽町から都心をぐるぐるクルーズしてR246に乗り、
同じ夜、骨董通りのジャズクラブで演ってるという
ヨネキのところへ寄ったが店には顔を出さず
彼のモンデオを見つけてワイパーに
「 今ジョアンを観てきたんだ、
アンコールに30曲くらいやった、 」
というようなことを書いた手紙を挟んだ
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例の如く満場を、
さんざ待たせておいてから
ギターを持った天皇みたいにして静かに登場した、
彼、ジョアン・ジルベルトを
あんなに間近でひとめ見て鳥肌が立ったあと、
我ながら驚いたことにわたし、
少し眠った
あの神がかった金色の、かそけき半音は
葉のそよぎや水の流れみたいに
しがみつきたくても受け止めたくても
さらさらさらさらと零れ落ちて消える
ああ
これは、一生モノだ、とおもった
わたしの心臓に、
小さな小さな刺青をされたような
いとおしいような果てしないような
とても大事な気分
わたし
あんなにうつくしく、【 I love you 】 と歌うひとを
これまで知らない
love とは空気そのもの、
あまりにナチュラル極まりなくて
神様というのはたぶん
わたしたちをこんなふうに愛するのじゃないか
際だった快感に、ぐらりと気が遠くなる
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チケをキープしてくれたマイミクシィの j. g. 、
筆舌の、まるで役に立たない体験でした、
ほんとにどうもありがとう
逢えてうれしいな
それに満月
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先日、
めずらしく小さなライヴをするという
パーカッションの田中倫明氏から情報があって
代官山で遊んでから中目黒へ
六月に、大野えりさんグループで
函館に来てくださったメンバーのひとり、
彼のコンガとカホーンプレイに函館が一夜沸いたものでしたが
その後、彼のスケジュールは
もっぱら綾戸智絵さんなどの大きなツアー三昧で
なかなか小さなライヴが見られなかった
だからうれしくて
おみやげを買い込んで出かけ、
たくさんの彼のオリジナルで
悩ましい夏の名残の風みたいなサルサやタンゴも聴いた
スペイン帰りのゲルニカ
彼がしてきた膨大な旅、
彼の汗と笑顔
彼というひとり、彼の物語としての音楽を
素直に紐解いて見せる様子がとても、
優しい
いつか夏の海辺で
彼のリズムに殺してもらおう
なんぞ静かなオーディエンスのなかで
わたしも座って聴いたので
身体が野暮とグチをいう
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3時間半停めた薄汚いパーキングを精算すると
すばらしいことに500円だった
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東京は、まだ暖かいし
ラジオはばかでつまらないが、
満月があかるい