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数日前の満月の晩、
東京を出発する直前に
行きつけのガススタンドでATフルードの交換をしてもらったとき、
おまえ今回ばかりはもう、この車での北海道行きは最後だぞ、
このミッションの状態ではたどり着けるとはおもえないね、と
お気に入りのお兄さんから通告されつつ、
なんとか23時間を要して、無事に函館に到着しています。
前日に半日かけて、
過剰積載の工事道具の山を下ろして車体を軽くしましたが、
かわりに望遠鏡やら、長期滞在のための2シーズン分の荷物、
それに9月のジャズ企画、 【 大沼 Hot Ride - ほとりで 】 のために
IKEA で買い込んだ大量の荷物などを積んだら、
やはり、ばかみたいな満載になってしまいましたが。
長いオンザロードでのお供は
満月と、すばらしい朝焼けと、しつこい発情期の2匹の黒猫。
それからときどき受信する、応援メール。
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深夜に到着して翌日からずっと、
あらかじめ依頼されていた、セカンドファミリーの店で、
夏のラッシュのヘルプに勤しみつつ、
ゼイゼイしています。
とはいえ、
自家栽培の野菜やハーブやハムなどを使用した、
おいしいプレートをサーヴするのは自慢なので、
たのしいな。
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きのう
一日だけオフをいただいて
祖父の墓参へ出かけた地元の小さなお寺で
ちょうど雪隠から出てきたスキンヘッドにヒゲ面の、
極悪プロレスラー 【 K.Y.若松 】 氏とバッタリ遭遇しました。
驚きをともなって10年来のあいさつを交わし、
別れてのち、街へ用があって出かけると国道で
またも彼の、物騒な車を発見したので、そのまま追尾しましたところ、
滞在先のホテルの前でようやく邂逅し、
夜にあらためて、といって食事を約束してふたたび別れ、
諸用を済ませてからその晩、
行きつけのお寿司屋へ向かいました。
店の若大将が
「 わあ若松さんですよね! 」 といって喜んでくれる。
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昼間のジャージ姿とは打って変わって
ボルサリーノを伊達にかぶり、
ブルーのスーツに身を固めて現れた極悪プロレスラーと
10年ぶりにどんな話をしたらよいのかしらと心配するまでもなく、
いまだ現役プロレスラー業のかたわら、
彼の棲家の拠点である芦別( あしべつ )市というまちの、
なんと市議会議員をつとめているという彼と、
北海道の行政と、文化の未来、なんかについて、
なぜかやたらと盛り上がり、
さらには
先祖や霊魂のはなしから筋トレのはなし、などへおよびにおよび、
6時間ものあいだ、ひさびさにお酒を、
たっぷりと浴びました。
夏の日本酒は、
ほんとうに美味しうございます。
横では
【 極悪 】 とは程遠い、始終、
遠慮がちな笑顔と、丁重な物腰をたもつ大入道も、
すてきに真っ赤。
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今夜は先ほどまでセカンドファミリーの店の
てんやわんやのヘルプをし、
すべてをきれいにして終了後、
窓を開けて風を通し、
それぞれのテーブルについてビールを呷って
それぞれのため息をついた、
低く鳴っていたアルバムの音量をグンと上げ、
木々を吹く夜風とビールと J.ジルベルトに
ベタベタになって身体をおおう疲れをすっかり晒し、
9月になったら俺たち、
大西順子やヨネキや大口純一郎やシュンちゃんたちと会える、
音楽三昧に、死ぬほど遊びまくろうぜ、
そう、明日の労働を遊びの9月のために!
とシュプレヒコールをして別れた。
※ 先夜のペルセウス座流星群は
ちっとも見えなかったね。