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昔覚えたニコラシカ、
S...という名の古い Bar の混沌で
そのヴォトカ抜き。
レモンにシュガー。
皮ごと食べちまうんだよ。
甘くて、酸っぱくて、苦い。
音楽!
ミュゼットみたいなのを少し!!
外は黄昏がおりて
甘い沈丁花が漂っているね、
東京の、春の匂い。
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夕刻ちかくに、マンションにいることがあると時々、
出かけてゆく場所があって
( なぜならヴェランダ窓から、よい西陽がいざなうので。 )
しかも生暖かい、これくらいの季節ならなおさら。
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風が通り、公園の緑を臨む小さなカフェ、
かわいいばっかりで
ガタガタの手作りがイイでしょうといわんばかりの、
昨今やたらと多い、鈍クサさというか素朴が売りの店、
そう、そこのことなんだけれど、
なにしろこの街は
日本有数のピンク街として成り立っているので
珈琲を飲んだりするためにちょうどよい店が
見渡すかぎり、ナシ。
さてそれで隣町、
この日も久々に、その店までドライヴ。
( なぜならうちの厨房に、珈琲豆がなかったので。 )
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ここはいつも、
たぶん1年間ぶッ通しで、
アン・サリー なんかをかけているようなところで、
しかもたぶんいつも同じアルバム、
この日も万がいち、そんなことだったら、
扉を開けるなり、
「 いいかげんにしたらどうだ。 」 と
怒鳴りつけてやろうかと勢い考えながら入ってみると(嘘)、
BGMは、小野リサ だった!!
取り掛かっていた事務仕事をテーブルに広げたうえで、
珈琲、と云おうと決めていたのに、
バドワイザ、と云ってしまった。
鼻でなんとなく、木蓮の香りを吸いながら
その薄いビールを、スルスルと飲んだ。
春の、夕刻の風。
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『 ヘイデンのすげぇヤツが手に入ったよ 』
というメールがあった。
蛇足だけれどヘイデン(b.)といえば。
わたしのあたらしい21世紀型携帯電話、
常時マナーモードのその振動、
ダイニングのテーブル上にあるときに限っていうと、
C.ヘイデンの弦の音にそっくり。
・・・ って、こんなこと書くと音楽バカみたいだけれど
リビングで鳴ってる彼の音( に限って )を
よく電話と間違えて取ってしまうことが頻発してるだけ。
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ちなみにそのテーブル、
A大学のチャペルで何十年も使われてきた生徒用机で、
ほどよい厚みのある、オール杢。
大学改修工事のときに、
【 廃棄処分 】 のシールが貼られて山積みされていたのを
夜中に工事通用口から忍び込んで
2台運び出し、というか救い出し、
借りてきたピックアップトラックに積み込んでズラかった。
机の裏にはミッシリ、
化石となった往年のガムが張り付いていたし、
表面は相合傘や数式やファックの文字の傷だらけ、
という出で立ちであるのですが
なかなか味わい深いテーブルであるのです。
このうえに置いてあると、
携帯電話の振動が、
例外的にとってもうつくしく鳴るってこともひとつ。
エラーイ。
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そのテーブルのうえにはときどき、
花を一輪、置いてやったりする。
きょうは moon beam fellows を捧げた 、
テーブルが、物凄くよろこぶので。
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ヴェランダの手摺りの外側、
いわば往来に向けて、花籠をくくりつけてある。
毎朝はやくに、
この窓を見上げてくれるアラビア人の友だちが、
さびしくならないように。
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ところが以前、
大きな喧嘩をしてしまって以来、
枯れた花籠のままになっているのだけれど、
その後彼は、
そこを通るたびに車の窓をあけて
カーステレオのボリュームを上げて
音楽でアピールしたりする。
古い映画のなかでは
窓の下で愛の歌やセレナーデを奏でる音楽師があるが、
彼の場合、
朝4時のヘヴィメタルだったりするから、
フン、
まだしばらく花は入れないでおく。