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東京滞在中のすてきなこととか
先日からふたたび函館に戻っているとか
そのような流れをスッ飛ばして
取り急ぎここでも取り上げて、
どうしても懺悔しておきたい、
ひどく私事だけれども、
心優しいひとりの男を釈明する昨日のためのページ
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函館へ到着した深夜が明けてはやく、
道南・青函・広域観光を提唱してリードする、
開発建設部や陸運支局のボスらをも含めた、
いつもの大人たちに混じり
知内、福島、とめぐって、
最南端に位置する松前町遊学までの、
バスツアーに乗り込んだ帰途のこと
*
松前圏内でのわたしたちの移動先の逐一に、
「 やあやあみなさん松前へようこそ、
おいでくだすってありがとう存じます 」
と、
白い歯のキラキラ光る、
美しすぎるスマイルで何度も
町のホストとして現れていた町長M氏、
いよいよ最終スポットの松前温泉で
全員がくつろいでいたときも、
「 やあやあみなさんようこそ、どうですイイお湯でしょう 」
と追いかけて顔を出してくれていた
その公用車について
*
「 では皆さんさようなら、
今日は松前で過ごしてくださってありがとうございました、
これは小回りの利く、僕の車です、
いまから別のお客様との面会に向かいますので、
バスの後ろをついていってお別れします 」
と、
駐車場のなかでもひときわ目立って貧乏臭い、
否、貧乏クサ過ぎてまったく目立たずに、というべきか、
小さくて可哀想なスクラップ軽車があって
フロントガラスには
大々的にカモメの放糞が張りついた、
ボディは潮風で薄汚く錆と穴だらけで、
壊れた注油口にはガムテープ補強のある、、、
そういう様子の
哀れな物件がまさしく氏の公用車だったので、
おおいに場が盛り上がり、
( 特にわたしは ) ヒーヒーと指差して笑いこけて、
いつまでも笑いこけて、お別れした
*
バスがなかなか走ってから、
わたしは自分が、財布入りの大事なバッグを温泉に
まんまと置き去りにしてきたことを認証し、
キャーどうしよう
じぶんのせいで大バスをUターンさせて
全員そろってはるばる戻る、
・・・・ などという事態はおぞましい!
とジタバタしつつ、
いっぽう、手が勝手に町長氏へ
コッソリと、というかしゃあしゃあと、電話した
「 ナントカというパーキングがその先にあるから
そこでバスを入れて待ってもらいなさい
僕が小回りを利かせて取ってきます! 」
と、
キュルッというカンジで小回りし、
あのスクラップは温泉に戻る
会のオーガナイザ役のMシェフが
わたしの恥をフォローしてマイクをとり、
「 エー皆さん
温泉を出たばかりですがさっそくオシッコタイムです、
なにを隠そう、M町長氏がなんとしても最後、
またひとめ皆さんにお会いしたいとのことで
トイレで待ち合わせることに! 」
というと、
「 しつこい町長だ 」
「 しつこい町長だな 」
「 ワハハ 」
「 ちょっと顔がイイからって 」
「 しつこい町長だ 」
「 アラまたトイレですって 」
などとゴワついたので
わたしはシートに埋まってしまいたくなった
*
Mシェフが
高台からみんなを連れて海にくだってゆき、
磯遊びなんかをしてお茶を濁してくれているあいだに
かの小回りスクラップがキュルッと
トイレ・パーキングに、
あえて小回り風にして入ってきて
窮屈なその中から白い歯が
パリリとしたスーツと颯爽スマイルを濁すことなく降り立ち、
氏とともにわたしのバッグが秘密裡に戻った
「 やあやあ皆さん、
本日はおいでいただきありがとうございました、
あれに見えるは青森・竜飛岬、
なんと走っている車の色まで識別できる友好的距離です!
どうですすばらしいでしょう! 」
などといって
スクラップの横に立ち、
ハンカチを振ってお別れする町長M氏に、
わたしたちはみんなバスから
オール・スタンディングで手を振って
いよいよにして別れた
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あああ!!
わたしは、
じぶんが、
とても、
わるい人間だとおもっています
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