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過日の夕方、
嫌いなデスクワーク三昧の気分転換と
空腹とを理由にして
山の村井シェフの留守邸へ忍び込む
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かってに冷蔵庫をあさって見つけたオコワと
「 コジャック 」 とかなんとかいう名の雑草
（ 最近、松前町でありついて以来のブーム ） とを、
ムッシャラムッシャラ独りで喰らっていると
じき、あるじのゲレンデヴァーゲンが、
機嫌よく温泉から帰ってきた
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オウ、肉でも焼くか
といって、にわかに人を呼び集め、
１００ｇあたり１万円だぜ、
と凄んでみせるカルビやピータン豆腐や
コジャックや天然マイタケやらを、大いに囲む
氏のオフはオフであったためしがなく、
つねにすこぶるハードで人が集まり、
いわば永久にオンだ
－ もうじきこの庭での、
忙しいランチグルメがあるというのに
俺のこんなご馳走カッさらいやがってお前ら、
などと騒いで時がたつ
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さてそのもうじきが来ると、
駒ケ岳のシェフ邸は天気がよろしくて
この日はメゾン主催、
お馴染みのガーデン・ランチグルメ日和で
晴れた敷地内に８０名だかのゲストを迎え入れた
タフで気のいいみんなが
その上タフなシェフとマダムの指揮で
数日前からゼイゼイして仕込む
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前夜、遅くにエーサク氏から電話
「 聞いたぞお前、ちゃんと歩けないんだって、
さちよは明日、戦力外か？ 」
ｍｍ、わたし
ヘルニア気味だった腰痛を
忘れさせるほどに大きく凌駕して痛いのは
左右ハム・ストリングス（ 大腿の裏 ）の、肉離れ
” 肉離れ ” てひどいネーミングだけど
正式には筋断裂といいます（ 肉は離れない！ ）
痛すぎるおかげで
椅子に座っていることすら苦痛、ということもあり、
参加費も支払うが手伝い班でもある、という
結局いつもの曖昧な、ファミリー・スタイル
動きがままならずに
多分に戦力外でありつつ見苦しくも、がんばる
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会がハケてしまってから自家用飛行機で到着した、
東京からのお友達もあったので
シェフやマダムたちといっしょに
戦争を終えたダイニングで仕切りなおし、
彼らをもてなす時間
昼のうちに大量に入り込んでいたハエ群に
（ ふだんはみんな、
鹿や鴨を撃つハンターたちゆえ ）
狩猟本能を刺激された男たちが
互いにゴタゴタに重なり合い、叫び合い、
ムキになってハエ叩き大会がやめられなくなり、
マダムに怒られる
＊
ゲストルームに宿泊する客人たちの
ベッドメイキングをバタバタと済ませてのち、
まだもてなし足りないということで
こんどはジャンボタクシーを呼びつけて
ひなびた駒ケ岳の夜の街へ繰り出し、
居酒屋と、場末のスナック巡りをしては
居合わせた、老若男女の場末の住民たちと
すっかり謎のカラオケ大会になり、
「 ホステスが足りなくてゴメンナサア～イ 」
とひたすら恐縮しつづけるママと、
そんなのカンケーねえ奇妙な全員とで、
歌い合い、叫び合い、踊り合い、
ゲラゲラ笑ってふたたび山へ帰宅し、
あらためてゆっくり、ゼイゼイした
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わたしの将来のゆめは、
いつも可愛がってくれて
長くファミリーとして付き合ってくださっている、
あちこちの独特のスタイルを持った大人たちが
スッカリ老いさらばえる前に、
敬意を込めて
彼等みんなを収容するための
すてきな 『 老人・クラブハウス 』 を
準備することだ
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