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突然にして
ヴェトナムへゆくことになったが
すぐに函館へ戻ります
*
その日、
急いで図書館に駆け込み、
ヴェトナム語ブックを4冊とレッスンCDとを漁って
がんばって言葉を仕込んだ
「 シン・チャオ・バー ( こんにちはお婆さん ) 」
「 トイ・ラー・ンゴイ・ニャッ( わたくしは日本人です ) 」
「 エム・オーイ ( ねえ君 ) 」
「 トイ・ノイ・ドゥック・ティエン・ヴィエ
( わたくしはヴェトナム語が話せます ) 」
「 カム・オン・オン( ありがとうおじさま ) 」
・・・・ などと、
両替を後回しにして
熱心に復唱しているうちに
せっかくイイ感じだったドルがあっという間に、
上がってしまっていた
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青函帯企画 、
( 青函帯/企画趣意2/10 のページ )
- 心配組の兄様たちが
これについての
ワキを固めようとしてくれているので夜、
方々への挨拶まわりを早めに終えて、
大門のバーで打ち合わせ
*
ところで
時期がかぶるなら
【 倶知安( くっちゃん )ジャズ 】 などの先輩陣へも
なにかコンセンサスがいるよね、といったら
- オオそれはナイスさちよちゃん
S氏( 主催者 )は僕の親友よ
、、、といってすぐに電話をかけてくれたH氏
「 近々函館に来る機会はないかどうか 」
に対し、
「 まさしく明日ゆくのですよ 」
ということで
奇跡的なテンポで邂逅が叶い、その翌日
短い昼食を、
大沼のケンゾーの店で相伴させていただく
*
現在、
夏の北海道には大きなジャズフェスが4件
それらが
短い夏のあいだにバッティングしたり
互いの集客にマイナス影響を及ぼしあわないように、
各地みんながはるばる札幌へ集まっての、
いわば寄り合いを開き、
日取りやアーティスト内容など、
すべて協定を組んで執行していることを、しった
これを乱すわけにはゆかないので、
それなりの仁義が、必要
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過日の疲れた宵
*
森山のところで
寿司を握ってもらって一息ついているうちに
カウンタは知ってる人ばかりになった
それで帰りそびれて結局遅くなったついでに
夜ジムへゆく予定を変更して、
今夜は休もうとおもっていた大門の夜の店々への
ご挨拶まわりを続ける
*
古い老舗バー
昨年はお世話になりました、
今年も来年も、どうぞよろしく、
とドアを開ける
「 ようやくうちへ来たわねえ、遅い 」
といってヒマそうだったので
貢献しておこうと、
さっき森山の店で
偶然会って別れたばかりのイマイズミ氏を呼び戻し、
しばらく過ごす、
彼はいったん葉巻を取りに自宅へ戻ったりして
自分のスタイルに落ち着いた
*
外へ漏れて来る大人たちの低い笑い声
以前、
この店の前の、
怪しい小道をなぜか抜き足であるくたびに
扉の向こうの会員制秘密倶楽部、
のようなのを空想したものだったが
実際に開けてみると
ピッタリ空想どおりの、
天井の低い、古く重厚な空間が
当時のままにひっそりとたたずんでいることに
たいへん驚くし、
馴染みにさせてもらってこうして眺めても
当初からの独特の緊張感、
あるいは矜持みたいなもの、を
その空間は気高く保持しようとしている
*
函館のこういう姿をところどころに見つけると、
いたたまれないような
祈るような痛々しいような
複雑なおもいが錯綜して去来する
これはわたし固有のおもいなのではなくてきっと
いまなお細々と出入りを続ける、
すでに老いた北洋漁業時代の男たちの、
土地に層をなす連綿のおもいなのだということを
わたしは、感じるのです
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