■
” 済んだ企画の
くだんの廃墟を閉めてゴミとする ” について
*
時の流れ、、、としたときに
なんとなく
そのひとことに収まりきれないような違和感、
もしくは反駁のようなものを感じていた
ずっと
*
わたしはあの廃墟に、
花街をやれ、といわれたのではなくて、
函館独自の街の在り方を
いよいよ具体的に突きつけられたのではあるまいか
尻切れトンボだったかつての物語を、
「 閉じよ 」 と云われたのではなくて、
「 拓け 」 と云われたのではないのか
どうあれば、
環が閉じるのかと
長いこと沈吟捻転していたが閉じない
なお廃墟がわたしに何かを語るのをやめない
*
そうか、これは拓くのだ
*
・・・ であるならば、
あきらめるわけにゆかない
テーマとしては、今ここだけの話ではなくて
この先、長い年月を、ずっとだ
■
廃墟の備品の移設保存先として
関係者からの薦めもあって展望していた、
旧ロシア領事館その他の古い物件、、
についての実際を確かめるために
市役所は K...部へ出向いて数時間のち、
結局、心中敗れ果てた
これについては後々詳細する
・
・
・
■
その足で、
消防本部首脳室
鬼の首 寄ってぞろりと五つ
*
制服を着た
多彩なる鬼の顔、
わたしにとっては
どちらかというとありがたい気持ちで畏れ入る歴々陣
鬼か菩薩かサムライか、
ここのボスとの対面はなんとなく
畏まって正視しないうえになおかつ緊張が漲りながら、
なぜだか魂が安らぐ
*
このたびはお前、
じつによくやったの惚れたのと上げられつつ、
だが俺はお前を理解しねえ出来ねえと
高らかに何度も声をウラ返しては
あとはもう余計な事を考えねえで早く東京へ戻っちまえと
重ね重ねのレッドカードを渡される
*
言葉の世界の表層に出ない部分で
同じ時代に踏みあわすことができた、
・・・ というようななぜか喜ばしい大展望な気分がする、
不思議なカリスマを持ったひとだ
わたくしは
我を通すのではなくて、
ものごとの真相を探りたくて声を出します
鬼か菩薩かサムライか計れないけれども
こちらのボスに対してはわたし、
それができる
■
見切り、見限り、諦め、引き際、立つ鳥、、、
表現は多々あれど
おそらくは 『 美徳 』 とされるこれらを
もちろんわたしとて心得ないわけでもなくて
といって、
だからどうかというと、
どうでもないような気もする、そのようなものは
そのようなもの、とは
要するにその美徳についてだが
衆口にいわれるその深さを量るに
それは、
どうせステレオタイプのものであって、
思考停止的な感が、どうもわたしにはするよ
*
あきらめたら、
いや、見切ったとしたら、
街自体がもとの不如意さを伴った時間に組み戻され、
まま不如意さがふたたび、累積されるのだろう
街はこうして流れてゆくのだとおもう
そういうもんだ
そして
その不如意さによって永劫、煩悶するのだろう
でも
「 それでいいのだろうか? 」
、、、 とわたしは声をひっくり返したい
何度でも
*
函館は、独自の文化を持っていたとおもうが
昨今それは見当たらないだろう
どこへいったのか
隠したのは誰か
*
どうすればいいのか、
わたしはなんとなくわかるような気がする
わかる、といっては倣岸のようだが、
それでもよいからわかると云おうとおもう
否、わかる入り口にいるような気配がする
■
出雲大社 -
*
済んだ企画の
廃墟立ち入り初めにあたり、
宮司さんに依頼し、
祭壇をつくって長い祝詞でお祓いの儀式を
本格的にしていただいた経緯あり
無事の挨拶
紅白餅を持ってあらためてお礼参りに寄り、
廃墟のゆくすえについて
そこでかくかくしかじか、と口説く
*
あなたはまた
ひょっとしたら
ものすごく新しい入り口に
立っているのかも知れません、
これまで見たことも聞いたこともない、
ハハハまたも新しい入り口ですね
さちよさん
我々の言葉では
現在のことを ” 中今( ナカイマ ) ” と呼びます
区切られた考えではなく、
続いてゆく流れの途中であることを示します
あなたのなかでは、それが意識されているでしょう
*
当然、
時間や物事をなす現在とは、
決していちいち独立したものではないし、
また現在を区切ってみて
それで何事も無かったことにすべきでないようにおもう
すべてを網羅して続いてゆく流れの途中で
いずれにせよ因果の糸は、結んでも結ばなくても、
あと先へと、遠く深く、のびてゆくだろう
*
同じ軌道上を追っているとおもっていた線が、
軌道をズレて環のイメージををうしない、
とたんにスパイラルを描き始める
同じ時間は流れない
■
わたしとしては
あきらめるのはよいが
あきらめなくてもよいのだとおもう
あきらめてきた結果が、いまの函館だ
*
あきらめてきたといって失礼にあたるなら、
目をつぶってきた、
ガマンしてきた、
不可抗力だった、
気圧されてきた、
無関心だった、
アホくさくなった、
見えなかった、
流れに逆らわなかった、
気づかなかった、
やることはやった、
手をこまねいた、
妥協してきた、
利益によった、
長いものに巻かれた、
心を閉ざしてきた、
やったけれどだめだった、
あがいたけれど無駄だった、
理解されなかった、
多数決だった、
無力だった、
知らないうちにそうなってた、
どうしようもなかった、
しかたがなかった
、、、、、、、なんでもいい
多くの人が、
不満や疑念をもち、
やるせなさや無念さや情けなさを味わってきたろう
断腸のおもいを喫し、失意し、
髪をかきむしり、あがき、断末魔を叫び、
身もだえし、地団太を踏んだろう
そうおもう
・・・ 或いはそうでもないのか?
流す涙も枯れ果てているのじゃないか
そうおもう
・・・ やはり或いはそうでもないのか?
*
あきらめても見ぬフリをしても
かかわらなくても妥協してもいいが、
反対に、そうしなくてもいい
潔く手を引くことが美であって
逆にしぶとく食い下がるのが醜であっても
わたしなら後者をとってもいいとおもう
達観した笑顔でいることはしないで、
わたしなら修羅でいいとおもう
*
わたしはいつも、もう長いこと、
この街がかなしくてかなしくてかなしくて
かなしくてしかたがない
といっても
わたしが話すのは、
小さなことだ
だが細部は、畢竟、大いなる全体にひとしいはずだ
ものごとは、
相似を為すしフラクタルであるはずだ
そして、
円環ではなくて、
スパイラルを描くはずだ
● ● ●