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雨漏り!!
雨漏り雨漏り!!
スゲー雨漏り!!!!
廃墟全館、雨浸し!!
台風で!! タルコフスキー!!
もうまったく、タルコフスキーの、映画!!
*
2007.9.23.予定
函館旧花街・大門へのオマージュ
【 一夜限りのグランド・キャバレーの灯 】
この時、
たまたま冷やかしにいらした土建会社の NK氏( 前出 )、
なぜか雨の降るキャバレーフロアで
せっかく虫干ししたソファたちが濡れそぼってゆくのを見て
あちこちに電話したとおもったら
数分後に土木屋の男たちが3人工あらわれて、
ブツブツ云いながら真ッ暗闇のなか、
水の処理をしはじめた、
上の階も、さらに上の階も、ちょいと驚きの光景だった
彼らが仕事をし出すのを見届けてから
NK氏は去る
「 さっちゃん、俺ね、
冷やかしじゃなくてマジですよ、マジ 」
- うん
そんなのわかってるサ、
泣けるほどに
*
廃ビルの中で、
傘を差す感じがわたしとしては気に入って、
すっかりその光景に夢中になりそうになりながら、
ああこのビルは本当にダメなんだ、
と、胸がギュウギュウした
ハッハッハ
屋内の、それも各階に、
雨が降っている
最初から、
各階のダメージ状況や、
ところどころの水害のあとや天井の破れた痕などは
すっかり確認していたにしても
まさかこうして各階に、雨が降る構図は
じつにショッキングで
*
こりゃ本当に映画的だが、
企画の総責任者としては顔面蒼白モノ、
- わたしは本当に、
この廃墟にひとびとを招き入れるのだろうか?
これらの煩悶はこれまで、
幾度となく繰り返されたことだ
が、
その煩悶を凌駕するほどの強い意志を、
この廃墟から毎日、受けている
それにしても -
*
じぶんが客ならば
はしゃぎながら、
「 自己責任自己責任! 」 などと無責任なことをほざいて
ドレスにヘルメットでもかぶっては、
よろこび勇んで来るところだろうが、
立場も状況も、意味が違う
*
それにしてもここは
いったい何年、
こうして雨降りのたびに、ビル全館が濡れたのだろ
こうしてビル全館がカビの温床となって、
いったい何年が経ったのだろ
真っ暗闇のなか、人知れず、
雨のたびに雨が
まんべんなく降り注いできたこの廃墟が
どうにもかわいくてならない
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おなじ日、
地域ロータリークラブの席に呼ばれ、
30分間キャバレーの演説をしろ、との指示のもとに、
途中ノコノコと作業着のまま出向いたが、
とても場違いで、しどろもどろだし、
云うことは明後日だったりおとといだったりして、
ばかのようだった
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台風だしこの日は早く閉めようかとおもっていると、
近頃のレギュラーの助っ人の面々が、
次々と現れてくれた
こんな天気の日に、
出てこなくってもいいじゃないの、というと
「 休んじまおうかなあ、とおもったけれども
だってここの予定もあるし、おめェ、
オレが休んだ分は現場が進まねえだろ 」 と
とんでもない汗だくで
ムキになって掃除機を操りながら、
カールしたロン毛をなびかせる、
怪しい浮浪者風情の賢者、通称ナゾノ博士、
いきなり、
二千年前はこうだった、云々、、
とかいうような話をしはじめてギョッとしたが
わたしはこのひとが、
川べりのブルーシートでひとり、暮らしているのだとしても
( アア悪いなあこんなこと云って!! )
彼が死ぬときには必ず、
立ち会ってやりたいとおもっている
*
近頃ゴキゲンで
鼻歌や独り言まじりで、
暗闇が好きで、やたらとノッソリとした仕事をする、
どうにも 『 ムーミン谷の生き物 』、
かなにかのような風情をした無職のクローク氏は
( 断じてわたしや廃墟のためでなく、
自分のナマった体のためにここへ来るという前提をもつ )
もうやめて帰りましょうよ? というと、
「 、、、、、、、、エッ、、、、イヤあの、、、、
も、、、もう少しやりたいんです、、、、、ス、、、スイマセン、、、
ワ、、、ワガママ、、、、、ですよね、、、、、、、、
わたしの、、、せいで、、、、、、閉め、、、、 」
という内容を云うのに、
だいたい6分くらいかかる男だが、
そう云い終わると、( 終わってないが )
またモワッと、
暗闇に消えていった
*
アレ、そういえばさっきO氏がいたっけな?
とおもったら、
彼はそっとあらわれて、
蚊取り線香を2つ、火をつけて段取ってくれて、
そして帰ったみたいだ
*
いよいよ閉めよう、とおもっていると、
最近になって来だした、
蓄音機マスターで品のいい旦那、といった風情でいつも
街をあるいている、IWサンもあらわれた
- なにもこんな天気に、しかも夜に!!
「 エエッ?? お天気なんて、
そんなもの関係ないじゃないですか?ネエ? 」
と、 ( ネエ? は誰に対してか知らないが )
上品に発言して猛然と、
皮張りの椅子たちを磨きはじめた
前出、HR氏の、職人風皮磨きとおなじように、
彼の皮磨きも、それはそれは徹底していて、
彼の磨いた椅子はそのまま商品となる
このひとには、
どうやら椅子の言葉がわかっているように見える、
きっとそうだろう
わたしが、
工事現場でのコンクリートや鉄の気持ちがわかるのと、
通じるものがあるんだ
*
Kちゃんの真っ白で透明な、
あたかも幽霊的といっていい美貌が
階段うえの暗闇に浮かび上がったので
ギャッといって
心のなかで尻モチをついたが
彼女もなにかにとり憑かれたように
まるで心頭滅却した禅的な無表情で
黙々とあちこちを磨いては帰ってゆく
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ああみなさん、
空間が、どんどん活き活きし出すのを
わたしの記録用キャメラワークでは、
きっとちっとも表現しきれなくって、もどかしい
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なんせ昨日の雨、
廃墟を満たす雨、
完全なる廃墟でありながら
ひっそりとした、且つ、はちきれるような生命の
可能性なのか残滓なのかは知らないが
それらを含む、
この目の前の不思議な建造物の、
刹那