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カンと沈黙するこの地面感が
さびしさの記憶の源泉であるのは否めないままに
東京にはないこれらの地面の無音を
わたしはいつでも特別に、求めています
地面が、日曜日であるような、
もしくは退屈な午後2時、であるような
( 子供のときからわたしは日曜日と午後2時がキライ )
*
空と
地面と
あの山の稜線と
このうつくしい気候とが
まるで身体の一部みたいにして
じぶんとの境界がなくなるように感ずる
一体化しながらも
その異質感もひとしおの、あかるい午後
この土地は、
ほんとうにわたしのことをあいしている
*
祖母(85)とひとしきりケンカしたあと
まるでイカさない気分で
彼女を横に乗せたジムニー、
吹けあがりも悪く、ターボばかりがやけに鳴き、
ノロノロした走りで高速道路に乗る
すこやかに晴れ渡った夕刻のオンザロード
*
この一ヶ月、
いちにちもオフを取らなかったので
この日がはじめてのプライヴェート、
彼女と街で晩ごはんをとりつつ
あちこちへ残っている小さな仕事をまわって
やっぱり忙しい
*
2007.9.23.予定
函館旧花街・大門へのオマージュ
【 一夜限りのグランド・キャバレーの灯 】
廃墟復旧・連続労働は昨日で28日目、
現場を閉め切って、
東京へいったん戻ります
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東京へ戻る前の最終の段取りとして、
カビ退治が残っていた
前日、
廃墟裏口のドアに
なにかがぶらさがってあり、
中にはスコーンの差し入れと、
まるで表彰状みたいな内容を自筆で書き連ねた手紙が
入ってあり、差出人は かりん 、とあった
雨の中で読んだので、
文字が随分と、にじんでしまった
*
その夜、
suga 氏がはるばる大沼方面から
仕事後、夜遅くに来てくれたので
YT社長のカビ退治用の液体を、噴霧器で撒いてもらった
*
そして翌、最後の晩にはひとり、
さらにカビ退治、ナゾの缶を使ってこんどは燻煙をして、
現場を1ヶ月のあいだ閉め切るつもりで
その、ナゾの煙がたくさん出るという、
YT社長から送られてあった恐ろしそうな缶を開ける
ビル自体を閉め切るのだから、
リース返却するハロゲン灯2機と三脚、
( これが廃墟の暗闇での、いのちの主要灯だった )
これらをあらかじめ消灯して
下に下ろしておく必要があるし、
ナゾの缶の設置は3フロア分するのだし、
広いし、暗いし、息を止めなくちゃいけないし、
ひとりで缶をひとつずつ点火しているうちに
タイヘンな煙にモクモクと巻かれて死ぬんじゃないか、
そりゃあマズいなあ、
ひとりじゃイヤだなあ、
...とグズグズ考えあぐねているところへ
カメラマンの女子が来た! ( ラッキー )
なんてイイ子なんだ!
そのうち突然、
ブログを見たといってサトコちゃんもやって来たが
わああステキ、さちよさん、これはスゴイ、おもしろい、最高、
でも用があるので今日は帰ります
といってさっさと帰った
*
説明書を読んでさらにグズグズしているところへ、
K氏がピザを持って登場する
” おぢさん ” という神様が作ってくれたピザ
これからカビ退治の大事なところなので、
あとでいただく、
というと
「 ダメだ、いま絶対に食え、いま、熱いうちに、
いまじゃなければダメだ、とにかく食え、
絶対に絶対に絶対にいま食え!!食えッたら食え、
お願いですいま食べてください、いまなんです! 」
とかなんとか、すさまじい勢いで迫られたので、
カメラマン女子といっしょにいただいた
*
ああ、おぢさん、とってもおいしかったよ、
アンチョビ、サーモン、バジルにチーズ
小さい頃からおぢさんのピザで育ち、
おぢさんのピザこそがおふくろの味、だというK氏のと、
おぢさんのと、
あわせてふたりぶんの愛を、
わたしたちは喰らった
うんあれは愛だった、どうみても
*
結果、K氏に頼ったので、
燻煙はうまく行った ( ラッキー )
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日曜深夜のフェリーで青森へ渡ります
カーラジオから
ラテンアレンジの 【 チュニジアの夜 】 が流れる
これは今回のキャバレー企画の、
個人的なテーマだ
*
夜窓を開けて国道を走る、
祖母の髪の毛がとなりでボサボサになって飛んでいる
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