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” ハミルトン ”
あの男のヘタな字でそう書いてあるカセット・テープを
然るべき場所にガシャッと入れると
今回の滞在ではこれまで
温泉に浸かってすら決して得られることのなかった、
壮大なリラクゼーションが心身に満ち、
満ちてそのうえ、溢れ出た
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あの男のトラックを借りて
廃墟のバリケードをつくるための、
コンパネと桟木とを
タダで貸してくださることになった山の上の資材屋へ走る
そのわたしに与えられた喜びは ” ハミルトン ”
走行していた国道は
突然に未知の外国となり、
その夕刻の見知らぬ国は、
猛然とわたしをワクワクさせ、自由にした
疲れは
性能のよい走りをするトラックと
その中で流れる ” ハミルトン ” とが癒した
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函館旧花街・大門へのオマージュ
【 一夜限りのグランド・キャバレーの灯 】
廃墟復旧、連続労働23日目
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ビルのオーナーとの
使用に関する、正式で厳格な契約書も無事に交わし終えた
このたびの、いちばんの難関であった消防法関連
これは多くの消防マンが
笑顔で応援してくださる
おかげで
スッカリ消防ファンとなったわたしは、
街をゆくとき、
通り過ぎる各消防署には必ず、
車のなかからしっかりと頭を下げて通過するようになりました
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数日前、
ブログを読んでくださっている、
わたしの守り神のひとりである氏がなんと、
東京から飛んできて現場のお手伝いにあらわれた
随分トンデモナイひとがあったもんだ
身軽さと
情熱と
あそび
並べて書くと子供の特権みたいだが
これらは大人こそが潤沢に、持つべきものにおもえる
共感しあうこと、共有しあうこと
これは誰の人生においても、強力なエッセンスでありましょう
ああ、
感謝しています、とても
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学生たちが、パラリパラリと
手に雑巾を持って集まってくれたときには
出せるだけ椅子やソファを下ろし、
陽に当て、叩き、吸い、磨き、エトセトラを繰り返してもらった
そのときの光景が
あまりにステキだったので、
界隈からひとが見に来た
おでん屋のまっちゃんも出てきた
愛を持って
椅子たちは得意だった
カビとホコリとサビにまみれているあいだはわからなかった、
本当はかわいい顔が、
どんどんピカピカになってくのは
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現場を留守にしてから
数時間後に戻ると
きょうは、椅子の上に
草餅や豆餅やクルミ餅が乗っかっていた
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以前ウグイス餅が車のなかに置いてあったのは
おぢさん、という神々のひとりの仕業だったし、
別の日、
陽も落ちて、
スッカリ暗くなった廃墟内の闇にひとりで座っていると
シャッターをくぐって外から手が伸び、
オイナリサンと海苔巻きを置いていったのは、
近所のNJ社長だった
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