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ヘラブナ師であるのみならず、
ヒマラヤの経験もあるスゴ級の山爺としてのKM翁が
昔、ある登攀での天候の急変により、
その日の進行をやめて雪洞を掘ってビバークしていたところ、
翌朝オレの雪屋根のうえをカッ飛んで行くやつらがいる、
晴れてみて気がつくと、そこはスキー場であった、
・・・・・ といった、
ワイルドに胸を揺さぶる話をしている、
夜更けの井戸端である
この日はO氏の誕生日前夜祭で、
O宅にたくさんの、得体の知れないひとたちが集まり、
さらに先日、淡路へ行った泉州人が厳しく選び抜いたという、
フグの極上のヒレ( フィレではない )が届いた日だ
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昨今、
ヒーヒー云いながらも顔がニヤけている、
ガイドをアテにして
山をナメきったお気楽テレマーク・スキーヤの我々(?)に、
或いは、ヒーヒー云いながらも喜びの興奮にむせぶ、
山をナメきったお気楽カンジキ・プレイヤーの我々(?)に、
徹底的に山の厳しさと意識とを教えようという、
とてもありがたい講習( 説教 ) という名の自慢話と、
O氏を言い出しっぺとして、
次回の雪山登山の企画を立てているところでもある
O氏などは、
イイ年こいて家の中にテントを張って暮らしたりするばかりでなく、
あそこの日暮山に日々ひとりで出向き、
ザックにダンベルを入れて登っている、
いま18キロまで増やした、とかなんとか、
山をナメきった何も知らない素人の我々からすると
「 ヒャアアッハッハッハ、ばかみたいだねえ 」
などと大笑いされるような( KM翁には誉められていた )
訓練を、したりなんかしている
それぞれにその雪山登山の話を進めるにつけ、
互いにまるで4,000m級の登攀みたいな気分になる、
というところが自然のすごいところで、
( 実際に我々がトライするのは、
近所に横たわる、D という標高400mの山です )
ベースキャンプの準備もし、
かつそこからアタック隊なるものも組まれ、登頂を果たす、
という、ワイルドに胸揺さぶられる企画です
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2月のはじめに
港のそばで開かれる、
【 シガーとラムと冬のジャズ 】 というパーティ、
せっかくだからダンスも楽しめたほうがいい、ということで
いきなりですがダンスを習いにいった
にわか仕込みでダンスなんて
またまたなにも知らないお気楽ダンサーになるのですが
まあよかろう、
主催者側が理想とするパーティの雰囲気には、
参加者はこぞって貢献すべきであると考える
ダンスくらいは礼儀のうちだよ
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函館に滞在しているあいだは、
すこぶるフットワークが軽いので、
その勢いに乗ってわたしは
V社の社長のご母堂に教えてもらった、
大門にある古いダンスホールの扉を叩いた、とある午後
まだ昼間だっちゅうのに
クロークを過ぎると、
真っ赤な照明にキラキラが飾り付けられており、
赤いソファのボックス席の連なった、
淫靡なる往年のディスコテークかキャバレー風情のホールから
昼間だっちゅうのに
黒い髪の毛を油で撫でつけて
黒いダンスウェアに身を包んだ男性が
手を広げて愛想よく現われ、
「 ああ、そういうご要望なら、
ブルースとジルバくらい覚えておくとよろしいでしょう 」
といって
ハイ、クィッククィックスロースロー、というのを
くり返しくり返し教えてくれた、
そのうちもうひとりのダンスウェアのおじ様が現われて、
こちらもくり返しくり返し、
わたしをクルクルと回してくれた
そうしてちょっと出来ると調子に乗って、
タンゴやルンバまで教わってしまつたので、
またも頭が沸騰している
忘れちまわないように、
また時間をつくって何度か訪れようとおもう
昼間から
こんな官能ムードをムンムンと展開しているハコを持つ、
ああ函館ってすてきだなあ
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きょうは午後いちばんで、
国際ホテルに北海道知事がやってきて
とあるフォーラムが開かれるというので
わたしはノコノコと出向くのです
良くも悪くも、
官のうごきは、可能なら知っておくつもりです