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余韻 -
バンドから届くメッセージ
と
その交感
*
きのうは
【 I am you 】 を枕に夢をみる
わたしたちのベーシックな心象は哀しみ
幾重にもつみかさなったとりどりの哀しみの層から
あるコラージュが浮かんでくるのを
わたしは何度も反芻するのです
クリムトの絵みたいに
淡い水のうえに横たわってたゆたうヨネキとその長い髪
その横で
シルエットになってわたしの大事な友だち、
コマヤ氏が、指を鳴らして激しく身体を揺らす
「 あの夜は夢 」
哀しみのルーツ
幾重にもかさなり合ったうちの、いちまいの絵
いつまでも、
さめざめと泣いているのがわたし
*
わたしたちがシェアしているものは、
いったい何だろう
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先夜、無事に終えた 【 いきなり海辺のジャズ 】
・ 大野えり ( vo. )
・ 大口純一郎 ( pf. )
・ 米木康志 ( b. )
・ 田中倫明 ( perc. )
おかげさまで
ヘルプスタッフを抜いても
総勢135名のお客様に集まっていただいて
海辺のギリシャ風の家はあの晩、
大盛況にふくれ上がりました。
( 一週間のあいだに、訪問と電話やファクスなどで
100軒以上の方への営業と、
プラスその他のライヴでのビラ撒きや、新聞、ラジオなど
やりましたがそれでもじつは自信がなく、
入りの予想が40名で、
欲張って考えても70名くらいだろうと考えておりました )
当日は
中に入りきれずに
1st ステージでフェイドアウトされたかたがたも。
( 御免なさい )
あるいは外で
ゆっくりと海潮を聴いていたひとも多々あって
持参したチェアに座ってパイプを燻らせてはビールを飲み、
ギリシャから漏れてくる、
激しく盛り上がった音を味わったり。
「 イヤ最高さ、このムード、おまえ100点だよ 」
といってわたしよりも嬉しそうに笑ってくれたり。
満面の笑顔で走り回る大人、
「 ようよう、おまえさあ、うれしいよ俺、
こんな雰囲気のギグ初めて!最高だよ最高! 」 といって
ギリシャの周りをグルグルまわってはしゃいでくれたり。
その光景といったら。
*
青森から到着したフェリーを降りてすぐにかけつけた、
彼らの乗ったバンドワゴン。
オーディエンスの
バンドに対するウェルカム度が異様に高くて
リハも音出しもナシにいきなり本番を始めてくれた彼らと
その熱狂、ふくれあがってうねる海辺の白い箱。
はちきれて飛び交う愛。
いちばん前でグルーヴする小さな子供たち。
揺れてヨネキを喜ばす、コマヤ氏ご一行。
年季の入った合いの手をガンガンに入れてくる年配ファンたち。
裏でニコニコしてくれているPAヘルプの suga 氏や カツミ氏たち。
窓を覗き、外ではしゃぎまわる大人たち。
ガシッとなんども手を組み合ってイェイという顔ぶれ。
笑った顔がなおらないまま肩を組み合う、
大好きなひとたちの顔。
誰ともなしに方々から届きまくった差し入れ。
たくさんのケーキ、たくさんの大沼ダンゴ、
たくさんの野菜、たくさんのきのこパイ、たくさんの珈琲、
たくさんのシュークリーム、おおきなカゴいっぱいのパン、
パット・メセニーが喜んだという五島軒のパンプキン・パイ、
たくさんのお酒、たくさんの唐辛子、
たくさんの、たくさんの、
ワンダフルとマーヴェラス。
*
1st と 2nd の合間に
ヴォーカル抜きのトリオで
わたしのために演ってもらった 【 My back Pages 】 、
知ってる曲がないとダダをこねる老ドクターのために
急遽はさんでもらった 【 You'd be so nice to come home to 】、
” 枯葉 ” という名を冠したジャズ喫茶店主のための 【 枯葉 】、
バンドのみなさんメンゴ。否ありがとう。
苦笑モノだがすべてはこの夜の
ハッピーなアクシデント。
あふれる喝采に
特別に演った二度目のアンコール。
さいごまでゴキゲンな笑顔でベースを抱いたヨネキ。
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翌日からすぐにこの3、4日間、
こんどはお礼まわりに駆けずり回ったのですが
花のブーケをそれぞれに持ってゆけば
そのお礼にといってまたスゥイーツを出してくれたり
食事を提供してくれたり
お酒を提供してくれたり
ジャズ喫茶なのにオーナーの極秘・手打ちそばが出てきたり
こちらがお礼に参りましたのに
ちっともお礼にならないじゃありませんかといって
お互いにありがとうを交わした。
ひとは、
こうして互いにありがとうを繰り返して死んでゆくんだ。
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そういえば
当日も、超ビジーであったはずの、
渡島( おしま )支庁長 ( = 南北海道のすべてをつかさどるひと ) も
わたしのある夜の突撃プレゼンテーションを覚えていてくれて、
律儀にも、きちんと出向いてくださいましたので
翌日すぐに、電報を依頼しました。
「 渡島支庁長さまへですね、では本文をどうぞ 」
- ・・・・・・ 感謝。
「 ええ カ ン シ ャ。 」
- 感激。
「 カ ン ゲ キ 」
- 雨あられ。
「 、、、ウッ、失礼いたしました、ウッフッフ、
あ、ア メ ア ラ レ 」
わあなんだ、うれしいなあ、
機械かとおもっていた電報局の女性が吹き出した。
*
そんななか、
事後反響の電話も多々いただき、
こんどはあなた9月にやるのね、大沼で、
もういまからカレンダーにマル、ぜったいに伺いますから、
という、ルッキンフォワードな声も、めいっぱい。
みなさんホントにありがとう。
つぎ、9月は大沼の湖のほとり。
どうぞよろしくね
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わたしたちはみんな、
いつまでもいつまでも愛し合う。
哀しみのルーツをシェアし合う。
波の音を聴きながら、
ひたすら静かに、どうでもない会話をし合う。
手を打っては、
いつまでも互いに揺れ合う。
*
たとえば、
夜の湖へ漕ぎ出して
たとえばまた、
あの防波堤のうえに腰掛けて
たとえばあのお寿司屋で
たとえばあの、場末の食堂で
たとえば昨夜の、番外なカラオケで
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