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どこまでも行くのが、趣味。
「 ばか。 」
” 俺は行く おまへを捨てて 茫漠の
流るる雲の 果つ処まで ” っていうの。
「 ばか。 」
そうその、ばか。
このひとからばかって云われると、うれしくなっちゃうな。
ばか、を上手に云えるひとは、
ちょっとすてきね。
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あの山々が、青いような桃色のような色に浮きあがる、
西陽の加減でいっとう美しい刻限、
なだらかな連峰。
天頂にひらける牧場の、ダイナミックな未知に、
雲が往く。
あの山々とわたしとは昔から、
心底あいしあっている。
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ひとりでどんどん南下し、漁港ツアーをした。
小さな漁港の、ひとつひとつ。
さも景気良く、色とりどりの大漁旗が雪にはためくのを、
じッと見る。
男の仕事とその気配が、好きだな。
いま、漁船とわたしとは、あいしあっている。
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昨晩は、
セカンド・ファミリーのママの誕生日のテーブル。
去年はのんきに遅刻して、
クリュッグを飲み損ねてしまったので、早く行く。
真っ白なテーブルクロス。
シャンパングラスが5つ。
ワインのキリリと利いたチーズフォンデュ。
今年のぶんの、よく出来た生ハムを削ぎ、
はちみつとブルーチーズで。( ← 最高!! )
おなじく今年のぶんの、よく出来たスモークサーモン。
びっくりするほどおいしい、一番絞りのオリーヴオイルで。
あれやこれや。
甘し糧、甘し糧!!
ジャズ喫茶ばりの大きなJBLと真空管アンプから、
ゴキゲンに鳴りまくっていたカルテット、
その次に、ビリーホリディ。
そしてあるじがいきなり八代亜紀の 【 舟歌 】 に変えたのをしおに、
気狂いみたいに歌をうたって、
踊りを踊って、つぎつぎと大音量でレコードを変えた。
【 スローなブギにしてくれ 】 の
「 want you !! 」 を大合唱することは、
わたし( たち )にとって、大いにカタルシス。
でも最後はぜったいに、
マイルスでメロメロになろう。
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まっくらな湖で見る天空は、
ドームでも天幕でもなくて、
みっしりと充満した、黒い物質。
見上げるより先に、星屑のまっただなかにいるようで。
クラクラ。
すべてにさ。