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16歳のころから出入りしていた店がある
セーラー服で来るなと何度も叱られたから
いつしか放課後は、
ユニオンスクエアのトイレットで着替えをするようになり、
その店へ出向いてしばらく過ごし、
それからさらに深夜おそくまで、
ひとり港のあちこちを探検して回っていた
*
探検するところは山ほどあった
笛を吹いたり、唄ったり、
ひとり旅のひとや旅のヨットマンと会話し、
夜の埠頭から埠頭、
山から海、小道から小道へと
徘徊などしていた
魅惑の空き物件には必ず侵入し、
ひとりで基地をつくった
*
その店では
「 ジャズとワインだけは
人生において、きちんとしろ 」 と教わった
アメリカ西部劇のタバーンのようだった暗い店内の、
ワイルドに薄汚れた雰囲気のなかで、
今は亡き Fドクターがご夫人と
いつも上品にワインとステーキを召していた
バックにはとても低く、
ラジカセからボブ・ディランが流れていた
じぶんでそのラジカセを司るチャンスが来たときには、
わたしは必ずボブ・ディランのカセットテープを回し、
そこに静かなざわめきがかぶって
ちょうど良くなる空間を期待した
そのあとで
ウィリー・ネルソンか、
エミー・ルー・ハリスにした
*
カウンタではA氏が、
いつもC.C.を飲んで酔って、
バンダナを巻いた首を赤くしていた
カントリー・ウェスタンをたくさん聴いて、
よくみんなで下手くそに歌った
ことにマスターのギターはあまりにもハンパ過ぎて、
よく誰もが悶絶した
オートハープも、ギターもバンジョーも、
ブルースハープも、
みんなしてさんざいろいろトライしたが、
誰も、ものにならなかった
・・・ ヘタ過ぎて誰もが互いに具合を悪くした
*
店の二階に
よく泊めてもらったし、
いろいろなものを食べさせてもらった
ランチタイムのおさまる午後の
ハンパな時間にはときどき、店をいっとき閉め、
そういうヒマな時間に、
当時から手描きで店のメニューを描いたり、
布でアレンジして作ったりした
たまには、
ビートルズの真似をして
連なって歩いてゆく先は倉庫街のビアホール、
ビールとともにアイスヴァインの皿をむさぼった
*
その店はその後、
5号線を北上し、駒ケ岳という土地に移転した
そのときもメニューを手作りした
そして7年前、
その駒ケ岳の土地を去り、
現在に至る今の店は、
大沼国定公園の周遊道路に落ち着いて、
昔のような、
西部劇のタバーンみたいなワイルドさはなくなり、
木々と庭のなかに、
しっとりと、貴婦人のように佇むことになった
このときも最初のメニューをいっしょに手作りした
*
高校時代からのおつきあいと数えて、
このたび、20年以上が経ってこんにち、
はじめて仕事として、この店のホームページやショップカード、
そしてメニューなどを、作らせていただくことになった
うれしいなあ
*
「 ジャズとワインだけは、
人生において、きちんとしろ 」
カントリーやブルーグラスを聴いたり唄ったり、
バドワイザやジャック・ダニエルは
何トン飲んだか知れないほどだけれど、
ウラではいつも、
すごいスピーカでこれでもかとモダンジャズを聴き、
マスターの溢れんばかりの講釈をとめどなく聴き、
いろんなワインをガブガブ空けて教わった
*
ジャズとワインだけは
人生において、きちんとしろ
このことは、ひとことでいうと、
エレガントに生きろ、ということだ
そしてエレガントというのは日本語にすると、
矜持をもつ、 ということだ
または、風になれ、ということだ
ワカルカナー
・・・ワッカンネーダローナー。
ま、いいや
あのひとたちを見てると、そうおもう
*
北海道の旅、
函館近郊・大沼へお越しの際は、ぜひとも、
【 WANDALE ― ワンデール 】 に立ち寄ってみてね
不肖サクセンカイギ社によるあたらしいホームページも、
無事オープンできましたので、
どうぞよろしく
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